米Microsoftが「Linux」に関する取り組みをますます強化している。同社が2017年9月下旬に米フロリダ州オーランドで開催した「Microsoft Ignite」では、クラウドサービス「Microsoft Azure」におけるLinux対応の強化を発表したほか、10月に出荷する「SQL Server 2017」の最大の機能強化点としてLinuxのサポートをアピールした。

 「Windows Serverや.NET Frameworkに注いできたのと同じ情熱を、Linuxに注いでいる。LinuxはMicrosoft Azureにおける『ファーストクラス』のプラットフォームだ」。Microsoft Azureを統括するコーポレート・バイス・プレジデント、Jason Zander氏は本誌とのインタビューでこう断言した(写真1)。

写真1●米MicrosoftのJason Zander氏
写真1●米MicrosoftのJason Zander氏
[画像のクリックで拡大表示]

 「ユーザー企業の『クラウドジャーニー』(クラウドへの移行)を支えるためには、WindowsだけでなくLinuxに対しても、ファーストクラスのエクスペリエンス(体験)を提供する必要がある」(Zander氏)。そう考える現在のMicrosoftにおいては、Linuxの扱いはWindows Serverと「同格」にまで高まったと言えそうだ。

 それを象徴するのが、2017年10月に出荷を開始すると発表したリレーショナルデータベース(RDB)製品の最新版、SQL Server 2017だ。SQL Server 2017は、Windows Serverだけでなく、Linuxやコンテナ仮想化ソフトウエアの「Docker」上でも稼働する。同社のエグゼクティブ・バイス・プレジデントとして「Cloud&Enterpriseグループ」を統括するScott Guthrie氏はMicrosoft Igniteの基調講演で「SQL Serverの歴史における歴史的なマイルストーンだ」と強調した(写真2)。

写真2●米MicrosoftのScott Guthrie氏
写真2●米MicrosoftのScott Guthrie氏
[画像のクリックで拡大表示]

SAP HANAの稼働環境としてLinuxを選択

 Microsoft自身がインメモリーDBの稼働に、Windows ServerではなくLinuxを選択するケースまで出てきている。Microsoftは2017年5月に、メモリー容量が最大20テラバイト(TB)という巨大なMicrosoft Azureの「インスタンス」を、欧州SAPのインメモリーDBである「SAP HANA」用に発表している。Zander氏は本誌とのインタビューで、実はこのインスタンスが仮想マシンではなく「OSにLinuxを搭載した物理的なサーバー」であることを明らかにしたのだ。

 Microsoftは2012年からAzureでLinuxを利用可能にしているが、これはあくまでもWindows Serverのハイパーバイザー上で稼働する仮想マシンにLinuxをインストールできるという扱いだった。しかしSAP HANA専用の巨大インスタンスではハイパーバイザーを利用せずに、OSとしてLinuxのみを使用し、Linux上でSAP HANAを稼働させている。物理サーバーのハードウエアもMicrosoftが独自に開発したものだという。