米Salesforce.comが、PaaS(Platform as a Service)を拡充している。2014年にビッグデータ用のPaaSである「Wave Platform」を発表したのに続き、2015年9月にはIoT(Internet of Things)向けのPaaSである「Thunder Platform」を発表。CRM(顧客関係管理)以外のサービスの提供に力を注いでいる。
ビッグデータやIoTのPaaSでも、SalesforceのPaaSにおける「伝統」は変わらない。同社のPaaSは、CRMのSaaS(Software as a Service)である「Sales Cloud(当初の名前は「Salesforce CRM」)」をユーザーがカスタマイズできる「Force.com」から始まった。最初にアプリケーション(SaaS)があり、そのデータベースの項目やロジックをユーザーがカスタマイズできるようにしたものをPaaSとして提供するのが、同社のForce.com以来の方針である(表)。
用途 | 業務アプリケーション | ビッグデータ | IoT | Webアプリケーション |
---|---|---|---|---|
SaaS | Sales Cloudなど | Wave Analytics | IoT Cloud | - |
PaaS | Force.com | Wave Platform | Thunder Platform | Heroku |
新しいPaaSについても、ビッグデータであれば「Wave Analytics」、IoTであれば「IoT Cloud」というSaaSがあり、それらをカスタマイズできるものをPaaSとして提供する。例えばIoT Cloudは、インターネットにつながる様々なデバイスからデータを収集し、デバイスに何らかのイベントが発生した場合にそれをリアルタイムに捉えて、イベントの種類に応じたアクションを即座に実行するという機能を備える。PaaSであるThunderは、収集するデータの種類や、イベント発生後のアクションの内容などをユーザーがカスタマイズできるものとなる。
開発手法としては、Salesforceが提供するカスタマイズ用のツールを使用する手法と、PaaSが備えるAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)を呼び出すプログラムを開発する手法の両方を用意する。
簡単な方法と柔軟性に富んだ方法の両方に対応
Salesforceのもう一つのPaaSである「Heroku」や、米Amazon Web Servicesや米Microsoftなど競合のPaaSは、アプリケーションサーバーやデータベースといったミドルウエアのをサービスとして提供する。それに対してForce.comやWave、Thunderは単なるミドルウエアではなく、Salesforceが開発したアプリケーションの機能もサービスとして提供している。ユーザーがプログラムを開発しなくてもカスタムアプリケーションを実現できる点や、Salesforceが開発した機能を利用することで、より少ない工数でビッグデータやIoTのアプリケーションを開発できる点がSalesforceのアプローチのポイントだ。
「PaaSのユーザーに対して、簡単に使える方法と柔軟性に富んだ方法、どちらも提供するのが我々の変わらぬ方針だ」。Salesforceの共同創業者でCTO(最高技術責任者)を務めるParker Harris氏(写真1)はそう語る。