商用のネットワーク仮想化ソフトウエア「Midonet」を2014年秋にオープンソースソフトウエア(OSS)にしたミドクラジャパン。同社の加藤隆哉氏(写真1、2)は「OSS化は大成功だった」と語る。「OSSにすることで、米国の大企業がMidonetを導入してくれるようになった」(加藤氏)のがその理由だ。

 日本ではOSSに対して懐疑的な目を向けるユーザー企業がいまだに少なくないが、加藤氏は「米国の大企業はむしろ、OSSでなければスタートアップが開発するソフトを導入してくれない」と語る。米サンフランシスコにある同社の米国拠点で、加藤氏に話を聞いた。

(聞き手は中田 敦=シリコンバレー支局)

2014年11月に「Midonet」をオープンソースにして、もうすぐ1年がたちます(関連記事:ミドクラ、ネットワーク仮想化ソフト「Midonet」をOSSとして公開)。

 Midonetをオープンソースにすることで、当社のビジネスは劇的に変わりました。びっくりするような規模の米国の大手企業がMidonetの採用を検討するようになったからです。

写真1●ミドクラジャパンの加藤隆哉会長
写真1●ミドクラジャパンの加藤隆哉会長
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 そもそも当社がMidonetをオープンソースにしたのは、米国の大手企業、それも医療系のようなコンプライアンスの条件が厳しい企業から「スタートアップが開発するソフトウエアは、OSSでなければ導入できない」と言われたからでした。

 これらの企業はネットワーク仮想化のようなITインフラに関連するソフトについて、継続的に利用できることを重要視しています。ソフトを開発するベンダーが他のベンダーに買収されて、そのソフトが利用できなくなるような事態を警戒しているのです。ソフトがOSSになっていれば、ベンダーに何が起こってもライセンス上はそのソフトを継続利用できます。

 実際のところはソフトの保守という問題があるため、開発元の活動が停止したOSSを継続利用するのは容易ではありません。あくまでもライセンス上の問題を重視するユーザー企業が多いという話です。

 ソフトをオープンソースにすることで、マーケティングに関しても大きなメリットがありました。Midonetをダウンロードして使ってみた欧米のエンジニアが検証結果などをブログで公表してくれるようになりました。そのブログを読んだ別のエンジニアがMidonetに興味を持ってくれるようになり、Midonetの認知が広がりました。

 オープンソースにする前は、Midonetの技術的な特徴などをアピールするためには自社のスタッフが一生懸命説明資料を執筆して、それを多くのエンジニアに読んでもらおうと努力する必要がありました。今は世界中のエンジニアが様々な言語でMidonetについて情報を広めてくれています。この前、インドの大手システムインテグレーターであるWiproのエンジニアがMidonetのブログを書いて、Twitterで紹介していました。うれしかったですね。

商用ソフトをオープンソースとして公開した後は何で稼ぐのですか。

 Midonetの導入支援などの「プロフェッショナルサポート」です。ソフトを手元で検証してみたユーザー企業がいざ本番環境に導入しようという際に、当社までコンタクトしてくるというケースが増えました。プロフェッショナルサポートを購入する顧客は毎月1~2社のペースで増加しています。