サーバーハードウエアを自社開発して、台湾のODM(相手先ブランド設計製造業者)から大量調達する大手クラウド事業者。米Intelは彼らをクラウドの「スーパー7」と呼び、「Xeon」プロセッサなどの大口顧客として重視している。その姿勢は、同社が2016年8月16~18日に開催した開発者会議「IDF 2016 San Francisco」で浮き彫りとなった。

 Intelが挙げる「スーパー7」とは、米Amazon.com、米Facebook、米Google、米Microsoft、中国Alibaba Group(阿里巴巴)、中国Baidu(百度)、中国Tencent Holdings(騰訊控股)の7社だ(写真1)。これらの事業者は巨大データセンターで使用する数万~数十万台のサーバーやネットワーク機器を自ら開発し、Intelからプロセッサなどを直接調達して、台湾のODMにハードを作らせている。

写真1●Intelが挙げるクラウドの「スーパー7」
写真1●Intelが挙げるクラウドの「スーパー7」
[画像のクリックで拡大表示]

 Intelはスーパー7に対して「特別待遇」を提供している。例えば、サーバーメーカーにも供給していない「特注品」のXeonプロセッサをスーパー7に提供しているほか、スーパー7によるハードの開発や検証に協力している。同社がスーパー7を優遇するのは「スーパー7が最新テクノロジーのアーリーアダプターであり、サーバーなどの更新間隔が一般企業に比べて短い」(IntelデータセンターグループのDiane Bryant上級副社長)ためだ。

 米調査会社IDCによれば2015年の世界サーバー出荷額の7.9%を、サーバーメーカー以外の企業がODMからサーバーを調達する「ODMダイレクト」が占めた。ODMダイレクトの成長率は前年比10.4%で、世界サーバー市場全体の成長率である同8.0%を上回る。需要が旺盛なスーパー7をIntelが重視するのは、当然と言えるだろう。

 IDF 2016 San Franciscoでも、Intelによるスーパー7の厚遇が見られた。Intelが新製品を発表するたびに、スーパー7の幹部を基調講演の壇上に招き、その製品を導入する予定であると述べてもらっていたのだ。

シリコンフォトニクスをMicrosoftが採用

 Intelは今回、光通信機能を内蔵した半導体チップ「シリコンフォトニクス」を完成させ、一部企業に対して2016年6月から出荷を開始したと発表した(写真2)。その1社がMicrosoftだ。基調講演では同社のクラウドサービスMicrosoft AzureのITインフラストラクチャー用ハードウエア開発の責任者であるKushagra Vaid氏が登壇し「AzureのITインフラで早期にIntelのシリコンフォトニクスを採用する」と発表した。

写真2●シリコンフォトニクスを発表するIntelデータセンターグループのDiane Bryant上級副社長
写真2●シリコンフォトニクスを発表するIntelデータセンターグループのDiane Bryant上級副社長
[画像のクリックで拡大表示]

 Intelのシリコンフォトニクスは、シリコン製の集積回路に半導体レーザーの仕組みを統合したもので、従来の光通信部品よりも安価に光通信を実現できるとする。IntelのBryant上級副社長は、「今日のデータセンターにおけるネットワークコストの50%を光通信部品が占めている。光通信に必要なコストをシリコンフォトニクスによって大きく引き下げる」と強調した。

 Intelは今回、100Gビット/秒の光トランシーバーである「Intel Silicon Photonics 100G PSM4」と「Intel Silicon Photonics 100G CWDM4」を発表した。2キロメートル以上の光通信が可能で、同社は2年内に通信速度を400Gビット/秒に伸ばす計画である。