米カリフォルニア州サンノゼに拠点を置く米Fetch Roboticsは、ロボットアームを搭載した自走式ロボット(「モバイルマニピュレーター」とも呼ぶ)を販売する2014年設立のスタートアップだ。同社のロボット「Fetch」は倉庫の中を自由に移動して、棚の中にある商品をピックアップできる。

 同社は2015年6月にソフトバンクを中心とする3社から2000万ドルの資金を調達したほか、同社のロボットは2015年9月から日本でも販売が始まる(関連記事:ソフトバンクも出資する倉庫用ロボットメーカーの米Fetch Robotics、9月から日本で販売開始)。Fetch RoboticsのCEO(最高経営責任者)Melonee Wise氏(写真1)に、同社のモバイルマニピュレーターの特徴や、ロボット開発のポイントなどを聞いた。

(聞き手は中田 敦=シリコンバレー支局)

そもそもなぜ、倉庫用のロボットを作ろうと考えたのですか。

 現在、米国だけで600万人もの労働者が流通業の倉庫などで働いている。流通業のバックヤードには、自動化の余地が大いにある。それが「Fetch」のようなロボットを開発した理由だ。

写真1●Fetch RoboticsのCEO(最高経営責任者)Melonee Wise氏
写真1●Fetch RoboticsのCEO(最高経営責任者)Melonee Wise氏
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 流通業は加速的な進化が期待されている領域だ。消費者は「アイスクリームを3時間以内に届けてくれ」といった具合に、どんな商品でも「オンデマンド」ですぐに届けてほしいと思い始めている。これまで何日もかかっていた業務を数時間にまで短縮するためには、抜本的な自動化が欠かせない。ロボットにとって非常に大きなチャンスがある。

Fetchのようなモバイルマニピュレーター(写真2)を実現する上で、難しかったのはどんなことでしょうか。

 そもそも、ロボットアーム(マニピュレーター)を搭載するロボットは数多く存在するが、ロボットアームを備えながら自走できるモバイルマニピュレーターは、市場にほとんど存在しない。モバイルマニピュレーターがこれまで無かったのは、人間がいる環境で自走するロボットを稼働するのが難しかったからだ。

写真2●ロボットアームを備えた「Fetch」
写真2●ロボットアームを備えた「Fetch」
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 自走型ロボットを人間がいる環境で稼働するには、周りに障害物や人がいないかリアルタイムに検出できなければならない。近年になって、障害物を見つけ出すレーザーセンサーや、物体までの距離を測る深度カメラが低価格化したため、そうしたロボットを開発するのがようやく可能になった。

 当社にとって本当に挑戦的だったのは、ロボットの移動計画を立てたり、センサーのデータやカメラの画像などを基に障害物やピックアップ対象の商品を認識したりするソフトウエアの開発だ。