センサーデータを分析する際に最も手間がかかるのは、データの「種類」や「関係性」を見極める作業だ。米General Electric(GE)はインダストリアルIoT(Internet of Things)のプラットフォームである「Predix」に、こうした作業を自動化するAI(人工知能)を追加する。データ分析における「手作業」を減らすことで、センサーデータの活用を促進する狙いだ。

 GEのデジタル事業部門であるGE Digitalが2017年7月25日(米国時間)にシリコンバレー本社で記者説明会を開催して、Predixのロードマップなどを解説した(写真1)。GE DigitalでPredixのプロダクトマネジメントを統括するGytis Barzdukas氏は、2015年に独立した事業部門であるGE Digitalの従業員数は2万6000人を超え、2016年のデジタル事業の受注額が40億ドルを突破したことなどを強調した。

写真●GE DigitalでPredixのプロダクトマネジメントを統括するGytis Barzdukas氏
写真●GE DigitalでPredixのプロダクトマネジメントを統括するGytis Barzdukas氏
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 Predixは2016年2月に、パブリッククラウドのPaaS(Platform as a Services)としてサービス提供を開始した。Predixを活用することでユーザー企業は、火力発電所のガスタービンや航空機のジェットエンジン、貨物列車の機関車といった産業機器のセンサーデータをインターネット経由で収集し、センサーデータを分析することで産業機器の「計画外停止」などを未然に防ぐアプリケーションなどを容易に開発できるようになる。Predixはアーキテクチャとして「マイクロサービス」を全面的に採用している()。

図●Predixの詳細
図●Predixの詳細
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コンテナ運用管理に「Mesos」の使用も公表

 マイクロサービスやミドルウエアのデプロイ(展開)には、オープンソースソフトウエア(OSS)のPaaS構築ソフトウエアである「Cloud Foundry」に加えて、コンテナ運用管理のOSSである「Mesos」を使用している。Mesosの使用は今回明らかになった。

 今回の記者説明会では、データの種類を判断するAIと、データとデータの関係性を判断するAIについてそれぞれ説明があった。前者のデータの種類を判断するAIは、2016年に買収した機械学習関連のスタートアップであるカナダBit Stew Systemsの技術が基になっており、2017年10月に出荷するデータ分析ソフトウエア「Predix Studio」に搭載する。後者のデータとデータの関係性を判断するAIは、同じく2016年に買収した米Wise.ioの技術が基になっているが、現時点ではまだ開発中であり、コンセプトのみの説明となった。それぞれを詳しく見ていこう。

メタデータを自動的に整備する機能を搭載

 Predix Studioは、産業機器のセンサーデータに特化したビジネス・インテリジェンス(BI)ツールのようなものだ。Predixプラットフォームに蓄積したセンサーデータをGUI(グラフィックス・ユーザー・インターフェース)ツールを使って読み込み、様々なデータ分析を実行する。センサーデータの分析結果を可視化(ビジュアライゼーション)する機能も搭載する。

 GE DigitalのMike Varney氏は「Predix Studioの特徴は、これまでデータサイエンティストが手作業でやっていたデータの下準備などを自動化できることにある」と説明する。例えばPredix Studioは、センサーデータのオリジナルデータをスキャンして、そのデータがどういう種類のものなのかを判断して、データの種類を示す「メタデータ」を自動的に付与する。これまでは、データサイエンティストが産業機器の設計者や運用担当者などにヒアリングした上で、手作業でメタデータを整備していた。

 GE DigitalのVarney氏は「データの種類をツールが自動的に判断してくれるため、データサイエンティストは機械学習を始める際の『教師有り学習用のデータ』の準備などの時間を短縮できるようになる」と説明する。Predix Studioは、異なる種類のセンサーデータの間の相関関係も自動的に検証する機能なども備える。こうした機能はGE Digitalが機械学習によって開発した。