クラウド市場で米Amazon Web Services(AWS)の後塵を拝する米Microsoft。同社がAWS追撃の切り札にするのが、人工知能の「Cortana」だ。同社は2015年7月13日(米国時間)、Cortanaの名前を冠したデータ分析クラウド「Cortana Analytics Suite」を発表した。

写真1●米MicrosoftのSatya Nadella CEO(最高経営責任者)
写真1●米MicrosoftのSatya Nadella CEO(最高経営責任者)
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 「インテリジェントクラウドを実現する」。同社が2015年7月13日(米国時間)から米フロリダ州オーランドで開催するパートナー向けのイベント「Microsoft Worldwide Partner Conference(WPC) 2015」の基調講演で、Satya Nadella CEO(最高経営責任者)は、クラウドの新戦略をこのように表現した(写真1)。

 インテリジェントクラウドの核となるのが、2015年秋に開始するCortana Analytics Suiteだ。「Cortana」は元々、Microsoftがスマートフォンなどに搭載する音声アシスタント機能を指す。米Appleが「iOS」に搭載する「Siri」に相当するものだ。

 ところがMicrosoftは、Cortanaを同社のデータ分析サービスに関する“ブランド”としても使い始めた。米IBMがクイズ王に勝った人工知能「Watson」を、データ分析製品/サービスのブランドとして使い始めているのと同じだ。Microsoftが今回発表したCortana Analytics Suiteは、機械学習やビッグデータ処理、ストリーミング処理などを統合した、高度なデータ分析を実現するためのクラウドサービスとなる。

高度なデータ分析を「民主化」する

 「今やあらゆる企業にとって、ビッグデータから知見を取り出してインテリジェントなアクションを実行することが、必須の課題となった。Cortana Analytics Suiteは、(Microsoftのプログラミング言語である)『Visual Basic』がプログラミングを(誰でも使えるよう)『民主化』したのと同様に、高度なデータ分析を民主化する」。Nadella CEOは、WPC 2015の基調講演でこのように主張する(写真2)。

写真2●WPC 2015の基調講演に登壇したNadella CEO
写真2●WPC 2015の基調講演に登壇したNadella CEO
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 Cortana Analytics Suiteの実態は、既存のデータ分析クラウドサービスの詰め合わせ(パッケージ)だ。機械学習サービスの「Azure Machine Learning(ML)」や、ビッグデータ処理ソフト「Hadoop」のサービスである「Azure HDInsight」、ストリーミング処理サービスの「Azure Stream Analytics」、ビッグデータ用のストレージサービスである「Azure Data Lake」、データウエアハウス(DWH)サービスの「SQL Data Warehouse」、BI(ビジネスインテリジェンス)サービスの「Power BI」などを詰め合わせ、そこにMicrosoftの人工知能の“ブランド”であるCortanaを付けた。