「カメラで食材を識別して、適切な温度と調理時間を自動設定するオーブン」「ユーザーを追いかけながら撮影するカメラ搭載ドローン」――。米国で最近、このような未来を感じさせる商品の予約販売が次々と始まっている。

写真1●画像認識オーブン「June Intelligent Oven」
写真1●画像認識オーブン「June Intelligent Oven」
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 米サンフランシスコに拠点を置くスタートアップの米Juneは2015年6月9日(米国時間)、温度や調理時間をコンピュータが自動設定するというオーブン「June Intelligent Oven」の予約販売を開始した(写真1)。価格は1495ドルで、2016年春に出荷を開始する予定だ。

 June Intelligent Ovenは、カーボンファイバー製の電熱線を備えただけの単純な「オーブン」だ。調理方法としては「焼く」「温める」しかできない。日本で普及する「オーブンレンジ」のように、電子レンジの機能を備えているわけではない。その代わりにJune Intelligent Ovenは、様々なカメラ/センサーを搭載する。食材や料理を識別するためのHDカメラ、重量計、温度計などだ。

ベストの焼き加減で調理

写真2●クッキーを認識した「June Intelligent Oven」
写真2●クッキーを認識した「June Intelligent Oven」
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 調理に際してユーザーが行うのは、食材をオーブンに入れることだけ。カメラや重量計が、食材や料理の種類や重量を自動判別し、コンピュータが最適な温度や調理時間を自動設定してくれる(写真2)。オーブン内蔵の温度計は、肉などの食材に突き刺して内部の温度を計測するというもの。肉の内部の温度を測りながら火加減を調整するため、生焼けや焼き過ぎを防ぎ、ユーザーの好みの焼き加減に調理してくれるという。

 June Intelligent OvenはWiFi機能を備えており、庫内のカメラが撮影する画像をインターネット経由でスマートフォンから閲覧できる。コンピュータによる自動調理が信用できない場合は、スマートフォンを使って、いつでも焼き加減を確認できるという仕組みだ。

 Juneの共同創業者、CEO(最高経営責任者)のMatt Van Horn氏やCTO(最高技術責任者)のNikhil Bhogal氏は、米AppleやSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)の米Pathでキャリアを積んだソフトウエアエンジニアだ。これまではオーブンのような「白物家電」とは縁もゆかりも無かったが、ソフトの力によって革新的なオーブンが実現可能になると考え、市場参入を図った。既存の白物家電メーカーにとって、全く新しいタイプの競合が現れた。