シリコンバレーで最近、店頭にセンサーを取り付ける小売店が増えている。来店客の数や属性、滞在時間、来店頻度などのデータを集めるのが目的だ。データの用途は何か。その一つは「パートタイム従業員の労務管理」だ。

 シリコンバレーの中心地、米パロアルトで起業した米Percolataは、パートタイム従業員のシフト管理を最適化するSaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)を提供する。同社のユニークな点は、シフト管理を最適化するのに必要なデータを集めるセンサーを、独自に開発した点だ。

 Percolataが開発したセンサー(写真1)は、カメラやマイク、無線LANのアンテナを搭載する。カメラで撮影した来店客の風貌からはその性別や年齢が、マイクで収集した音からは来店客が一人で来たのかグループで来たのかが、スマートフォンの電波からは滞在時間や来店頻度などが分かるという。

写真1●Percolataの開発した小売店用センサー
写真1●Percolataの開発した小売店用センサー
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 同社はこうして集めた来店客のデータと、その時の時間帯や気候、道路の渋滞状況との間にあるパターンを機械学習によって分析し、数日後から数週間後の来店客数を正確に予測できるようにした。小売店はPercolataが提供する来店客数の予測を基に、パートタイム従業員のシフトを適正化する。同社の労務管理SaaSの料金には、店頭で使用するセンサーの利用料金も含まれている。

写真2●PercolataのGreg Tanaka CEO
写真2●PercolataのGreg Tanaka CEO
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 創業者のGreg Tanaka CEO(最高経営責任者)は、「端末を統合したクラウドサービスというアイデアは米Nestを参考にした」と語る(写真2)。米Googleが2014年に買収したNestが販売するスマート室温計「Nest Learning Thermostat」は、エアコンの温度設定を自動化できるという装置だ。Nest Learning Thermostatは、利用者によるエアコンの温度設定操作を機械学習して、利用者の生活パターンや温度の好みを把握。暖房や冷房の温度を自動的に調整する。

スタートアップにもハード製造が容易に

 「スマホの普及によって、カメラやセンサーなどの部品の価格が大幅に下がり、スタートアップでもハードウエア製造ができるようになった。何かを改善するために足りないデータがあるなら、デバイスを安く作ってデータを収集すれば良い。そのことをNestは教えてくれた」。Tanaka CEOはそう力説する。