設備投資額は3年で294億ドル(約3兆3000億円)に達し、世界中にプライベートネットワークを張り巡らせ、独自開発のセキュリティチップでハードウエアを防御――。米GoogleのUrs Holzle上級副社長が2017年3月9日(米国時間)、「Google Cloud Next 2017」の基調講演で同社のインフラの内側を明かした(写真1)。

写真1●米GoogleのUrs Holzle上級副社長
写真1●米GoogleのUrs Holzle上級副社長
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 Holzle上級副社長はまず、通信事業者をしのぐ規模に成長したGoogleのネットワークインフラの現状を紹介した。例えば「G Suite」などGoogleのサービスを利用するユーザーの通信パケットの98%は、Googleのプライベートネットワークから直に、ユーザーが利用するISP(インターネット接続事業者)に届いているのだという。

 Googleは現在、182の国と地域にネットワーク拠点を配置し、拠点間をGoogleのプライベートネットワークによって接続している(写真2)。そしてGoogleのプライベートネットワークは、「世界中のほぼすべてのISPと相互接続している」(Holzle上級副社長)。そのためパケットは、他社のネットワークを介することなくGoogleのクラウドからユーザーのISPに直接届く。

写真2●世界182カ国に広がるGoogleのネットワーク網
写真2●世界182カ国に広がるGoogleのネットワーク網
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 「(プライベートネットワークとISPを相互接続することで)より多くの帯域(スループット)を実現し、遅延(レイテンシー)を短くするだけでなく、より良いセキュリティを実現できる」。Holzle上級副社長は、他社のネットワークを介さないメリットをこう説明した。

 世界規模のネットワークを構築するためにGoogleは毎年1兆円に近い設備投資を行い、自社海底ケーブルまで張り巡らせた。自社海底ケーブルは今日では、米Microsoftや米Facebook、米Amazon.comなども保有するが、「通信事業者以外で初めて海底ケーブルを敷設した民間企業はGoogleだ」(Holzle上級副社長)と胸を張った。Googleは2009年に日米間海底ケーブル「UNITY」を敷設し、それ以降も海底ケーブルを増やし続けている。「あるアナリストは、グローバル・インターネット・トラフィックの25~40%をGoogleが占めていると分析している」。Holzle上級副社長はGoogleのネットワーク規模をそう説明した。

2018年までにクラウドのリージョンを18カ所へ増強

 データセンター網も拡大が続いている。Googleは現在、クラウドサービス「Google Cloud Platform(GCP)」の「リージョン」を6カ所、データセンターの単位を示す「ゾーン」を18カ所設けている。一つのリージョンは、約3カ所のゾーンによって構成されている計算だ。これを2018年までに、17カ所のリージョン、50カ所のゾーンにまで増やす。数カ月以内にシンガポール、米国バージニア州、オーストラリアのシドニー、英ロンドンにリージョンを開設し、その後はオランダ、カナダ、米カリフォルニア州にリージョンを設ける予定だ。

 Holzle上級副社長は、Googleの徹底したセキュリティ対策の詳細も明かした。例えば物理層でのセキュリティ対策として、オクラホマ州にあるデータセンター1カ所だけで、175人もの警備員を配置しているという。