「Google CloudはAI(人工知能)を民主化する」――。米スタンフォード大学から米Googleに移籍したAI研究者のFei-Fei Li氏は2017年3月8日(米国時間)、米サンフランシスコで始まった「Google Cloud Next 2017」の基調講演でこう語り、AIクラウドの新機能などを発表した。

 Google Cloud Nextは、Googleが毎年開催するクラウドのカンファレンス。初日の基調講演にはGoogleのSundar Pichai CEO(最高経営責任者)や同社クラウド事業部門のトップであるDiane Greene上級副社長などが登壇したが、新機能の発表は2016年11月にGoogleに移籍したばかりの著名AI研究者、Fei-Fei Li氏が担当した(写真1)。Li氏は画像認識アルゴリズムの開発に必要なデータセットを研究者に提供する「ImageNet」プロジェクトの立役者として知られる。

写真1●「Video Intelligence API」を発表するGoogleのFei-Fei Li氏
写真1●「Video Intelligence API」を発表するGoogleのFei-Fei Li氏
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 GoogleではAI&機械学習担当チーフサイエンティストを務めるLi氏は基調講演で、AIはより多くの人々に利用されてはじめて、社会や経済に大きなインパクトを与えるものだと指摘した。Li氏は「すべての自動車が自動運転車になれば、渋滞は大幅に減少し、駐車場不足も解消し、都市を根本的に変えていく。AIで重要なのはスケール(規模)だ。誰もがAIを使えるようになれば、社会は大きく変貌する。そのためにはAIの民主化、AIを誰でも使えるようにすることが必要だ」と語り、「それを実現するのがGoogle Cloudだ」と主張した。

 Google Cloudは「AIの民主化」を実現するために、(1)計算能力(コンピュート)の民主化、(2)アルゴリズムの民主化、(3)データの民主化、(4)才能(タレント)の民主化という四つの民主化を進めていくという。

 計算能力の民主化を実現するために、機械学習に必要なコンピュータ資源をオンデマンドで提供する「Cloud Machine Learning(ML)」を提供する。Cloud MLは2016年9月にベータ版の提供を開始しており、今回サービスが正式版に格上げされた。

動画の被写体をキーワード検索

 アルゴリズムの民主化のためにGoogleは、ユーザーがアルゴリズムを開発しなくても、画像認識などのAIをアプリケーションに組み込めるようになる各種API(アプリケーション・プログラミング・インタフェース)をクラウドのサービスとして提供している。Li氏は今回、新しいAPIとして動画認識APIである「Video Intelligence API」を発表した。Googleのクラウドにアップロードした動画の被写体をAIが認識することで、被写体をキーワード検索で見つけ出せるようになる(写真2)。

写真2●「Baseball(野球)」というキーワードで動画を検索した結果
写真2●「Baseball(野球)」というキーワードで動画を検索した結果
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 AIのAPIとしてGoogleは既に、音声認識の「Cloud Speech API」、画像認識の「Cloud Vision API」、機械翻訳の「Cloud Translate API」、自然言語解析の「Cloud Natural Language API」を提供している。音声認識や画像認識のAPIは米Amazon Web Services(AWS)や米Microsoftなども提供しているが、データ量が大きく解析するのに大量のマシンパワーを必要とする動画認識のAPIを提供するのは、Googleが初めてとなる。