「アラフォー」以上のIT業界人にとって懐かしい名前が帰ってきた。情報管理ソフトウエアベンダーの米Veritas Technologiesが2016年2月1日(米国時間)に米Symantecから独立して営業を開始した。Veritasという名称の復活は11年ぶりとなる。

 セキュリティソフト最大手のSymantecが、バックアップなど情報管理ソフトの最大手だったVeritas Softwareを買収すると発表したのは2004年12月のこと。135億ドル(当時の為替レートで約1兆4000億円)という買収金額は、ソフト会社の買収としては過去最大規模だった。米Oracleが2009年に米Sun Microsystemsを買収した際の金額が74億ドルだったことと比較すると、その大きさが分かるだろう。

 しかしSymantecにとってVeritas買収は非常に高くついた。買収直後の2008年にリーマンショックが発生。情報管理ソフトの大口ユーザーだった金融機関などがIT投資を削減したことによって、SymantecはVeritas買収に伴う「のれん代」の減損処理を強いられた。Symantecが2008年10~12月期に計上したのれん代の減損費用は約70億ドルだった。

 Veritas買収によって情報の保護(セキュリティ)と管理に関わるソフトの一元提供を目指したSymantecだったが、2014年にその方針を転換。情報管理ソフト部門をVeritas Technologiesとの社名で独立させると発表した。2015年8月に同事業部門の売却先が投資ファンドの米The Carlyle Groupに決まった。Carlyleによる買収価格は当初80億ドルとされていたが、最終的には74億ドルになった。そして2016年2月1日から、新生Veritasとしての営業が始まった。本社はSymantecと同じくシリコンバレーにある。

写真1●米Veritas TechnologiesのCEO(最高経営責任者)はBill Coleman氏
写真1●米Veritas TechnologiesのCEO(最高経営責任者)はBill Coleman氏
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 新生VeritasのCEO(最高経営責任者)はBill Coleman氏(写真1)。Oracleに買収されたアプリケーションサーバーのベンダー、米BEA Systemsの創業者としても知られる(BEAのBはColeman氏のBillという名前に由来する)。Veritasという社名だけでなく、Coleman氏の名前もアラフォー以上のIT業界人にとって懐かしいものだと言えよう。

 新生Veritasの売上高は、2015年度で25億ドル(Symantecの情報管理ソフト部門の売上高)。全世界39カ国に営業拠点を構え、従業員数は8200人に上る。2004年におけるVeritasの売上高が20億ドルだったことを考えると、同社の売り上げはこの10年で25%増えただけのように見える。ところがColeman氏は「情報管理ソフト部門の売上高は過去10年間に50%成長していた」と語る。

 計算が合わないのは、「かつてのVeritasはシステム運用管理ソフトなども手がけていたが、Symantecによる買収後にそれらの部門が売却されたため」(Coleman CEO)。Coleman CEOは「データのバックアップやアーカイブ、ディザスタリカバリー(災害対策)といった情報管理ソフトの業績はSymantecによる買収後も好調で、今では『Fortune 500』企業の86%がVeritasの情報管理ソフトを使用している。新生Veritasの売上高は今後も年率8~9%での成長が見込める」と語る。