FinTechは、「預金」「融資」「為替(決済)」という銀行の三大業務と呼ばれる分野に革新を持ち込んでいる。特に、伝統的ビジネスモデルでは実現が難しいスピードと柔軟性を武器にする「オンライン融資」は、新たな融資ニーズを掘り起こしている(図1)。

図1●FinTechの主な領域
図1●FinTechの主な領域
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 楽天カードは2013年4月、楽天市場の出店事業者向けに「楽天スーパービジネスローン」を開始。2015年1月には、初回審査を通過した事業者に対して、契約更新なしで一定期間継続的に資金提供する「極度方式基本契約」と呼ぶ形態を追加した。貸出金額の上限は3000万円。極度方式基本契約の場合、最短で翌日には資金を提供する。

 アマゾン・キャピタル・サービスも2014年2月、融資サービスを始めた。「Amazonマーケットプレイス」の参加事業者に対して、最大5000万円を融資する。初回は最短5営業日、2回目以降は最短3営業日で入金する。

 EC(電子商取引)モール大手の提供する融資サービスが、短期間で融資審査ができるのには理由がある。銀行とは異なる業務フローを採用しているからだ。楽天は、独自の判定基準を基に、融資申込者の顧客評価、取引情報などを突き合わせ、ほぼ全自動で審査を実行する。人手での判断が必要になるのは、審査可否を明白に自動判定できない一部の案件だけだ。

 銀行の場合、一般的には営業担当者が案件を受け付けた後、融資担当者による稟議が必要だ。ワークフローシステムなどで事務処理の効率化を図る銀行は少なくないものの、どうしてもスピードに差が出る。

 「銀行では融資を受けにくい企業が融資先であることも少なくない」と、楽天カードの勇浩一郎執行役員は話す。「当社が重視するデータは、銀行のそれとは異なる」(勇執行役員)からだという。EC上では出店者の取引情報などが逐次、データとして発生する。詳細な内容は明かさないものの、銀行には取得が難しい取引データを持つことで、独自の融資を可能にしているようだ。

 事業者の取引データを持つのは、ECモール運営事業者だけではない。長年、決済代行サービスを続けてきたGMOペイメントゲートウェイの関係会社であるGMOイプシロンは2015年3月、「GMOイプシロン トランザクションレンディング」を始めた。最短5営業日で融資を実行する。

 GMOペイメントゲートウェイは、サービス提供先の日々の決済データを保有する。「累計1兆円以上の決済データを扱ってきた」と、GMOペイメントゲートウェイの村松竜取締役副社長は語る。この決済データを基に、独自の審査基準を構築。融資先の決済データを照合することで与信を判断し、貸出限度額や利率を割り出す。決算書や担保は不要だ。