法改正で外国人の利用だけ緩和

 この矛盾した状況を改善すべく提出されたのが、冒頭で触れた「電気通信事業法等の一部を改正する法律案」である(図8)。この改正には「技適」の規定を緩和し、外国人観光客による電波法違反を無くす狙いがある。

図8●外国人観光客のスマホ持ち込みだけを大幅緩和
図8●外国人観光客のスマホ持ち込みだけを大幅緩和
4月24日に衆議院で可決された「電気通信事業法等の一部を改正する法律案」により、外国人観光客が持ち込むスマホなどに関して、来日から90日を超えない範囲で総務省令で定める期間に限り、「技適がある端末と同一と見なす」という規制緩和が行われる。3G/LTEの利用に関しては電波法の例外規定(第103条の5)によって、海外の通信事業者との契約に基づくローミング中に限り認められていたが、この改正が成立すると、国内事業者のプリペイドSIMやWi-Fi、Bluetoothなどの利用が旅行者に限り合法になる。
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 具体的には電波法第4条に新たに2項を追加。一時的に来日する観光客などの端末に限り、「入国の日から同日以後90日を超えない範囲内で総務省令で定める期間を経過する日までの間」は、技適がある端末と同一とみなす規定を追加した。

 この改正法が施行されると、外国人観光客は、旅行中にMVNOなど国内通信事業者のSIMを利用したり、無料Wi-Fiスポットなどを利用したりしても合法となる。

 一方で、国内で海外スマホなどを利用したいユーザーには厳しい改正内容になった。海外端末の利用に関して緩和が全くなかっただけではない。国内におけるスマートフォンなどの端末販売事業者に対し、「技術基準に適合しない無線設備を製造し、輸入し、又は販売することのないように努めなければならない」という努力目標を課したのだ。このような条文が加わったのは今回が初めてである。

 この規定には罰則などは設定されておらず実効性はわからない。しかし、技適を未取得の端末を国内で堂々と販売する行為をけん制する意図は明らかだ。