各国が独自の基準と運用を実施
こうした技術認証制度を持つのは日本だけではない。世界の主要国がそれぞれ独自に基準を定め、運用している。アメリカの「FCC ID」や欧州連合の「CEマーク」が代表的だが、それ以外の各国においてもそれぞれ独自の認証制度が存在する(図4)。
電波利用のルールを独自に設け、運用するのは先進国にとって当り前の話であって、日本だけが特殊というわけではない。電波利用のルールは、国際間で協議して調整するケースも多いが、基本的には各国が独自に決める。これは各国の主権の範疇だからだ。このため、技術基準や運用ルールも国によって少しずつ異なる。
例えば、Wi-Fiで使う規格は米国でも日本でもIEEE 802.11シリーズである。しかし米国と日本では利用できるチャネルが異なるほか、日本より高い電波出力が米国では許されている。米国は国土も広く、家屋も大きいためだ。木造建築が密集する日本で、米国並みの出力を許すと、電波の混信などを引き起こしかねない。
“郷に入っては郷に従え”ではないが、無線機器に関してはそれぞれの国のルールに従わざるを得ない。仮にそのほかの仕様がほぼ同一でも、利用周波数や電波出力の最大値が日本の規定を満たさない可能性がある以上、米国仕様のWi-Fi機器を日本にそのまま持ち込んで使うのは許されない。その機器が日本の規定に合致していると証明する必要がある。これが「技適未取得」の端末の利用が法に触れる基本的な構造である。
外国での認証取得を簡易化
海外の製品であってもメーカーがその気になれば技適の取得自体はそれほど難しくない。国内の認証機関は届け出制で民間に開放されており、複数の選択肢がある。国際的にも承認証明機関制度や相互承認協定(MRA=Mutual Recognition Agreement)が既に導入されているからだ(図5)。