総務省は4月3日、会期中の第189回国会に「電気通信事業法等の一部を改正する法律案」を提出。4月24日に衆議院で可決された。「技適」の規定を緩和し、外国人観光客による電波法違反を無くす狙いだ。技適は総務省が所轄する無線通信機器の技術認証である。スマートフォン(スマホ)を含む携帯電話機、無線LAN(Wi-Fi)やBluetooth機器など広く一般に使われる通信機器を対象にする。

 実は2020年東京五輪に向けた外国人観光客の集客などに絡み、「技適の問題」が一般メディアなどでもあらためてクローズアップされていた。外国人観光客が持ち込むスマホで、MVNOなどが提供するいわゆる「格安SIM」や無料Wi-Fiサービスなどを利用すると、法律違反になってしまう可能性があった(図1)。

図1●海外スマートフォンの国内利用に「技適」の壁
図1●海外スマートフォンの国内利用に「技適」の壁
海外スマートフォンの国内利用の観点で、「技適」制度が抱える課題が浮かび上がってきた。
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 2020年に向けて計画中の外国人観光客向けの無料Wi-Fiや格安SIMといった各種のサービスが法律違反を助長し得るといういささか不都合な状況になっていた。このままでは政府や自治体が、外国人観光客に向けたこれらのサービス展開を支援しにくい。今回の法律改正にはこの問題を解決する意図がある。

 国内のユーザーにとっても技適問題は無関係ではない。海外で販売されているSIMフリースマホの国内利用に制限が生じているからだ。海外から個人輸入したり、通販で購入したりした海外スマホを国内で利用すると法律違反になる可能性がある。また、東京・秋葉原のような電気街の店頭や通販で売られている輸入品のスマホやタブレット、Wi-Fi機器やBluetooth機器にも実は、国内で利用すると法に触れる端末が混じっている。

 技適問題は、海外で販売されているスマホなどの多くが、技適を取得していないために起こる。技適未取得の機器を国内で利用すると、電波法の規定に触れてしまうのである。

 だが、スマホが利用する第三世代(3G)/第四世代(4G)の携帯電話システムやIEEE802.11無線LAN、Bluetoothなどはいずれも国際規格である。国内と国外で技術的な仕様が大きく異なるわけではない。同じ仕様の製品であるはずなのになぜ法律違反になってしまうのか? この特集では技適の謎を解いていく。