ビッグデータの活用には様々なアプローチがある。その中でもビジネスアナリティクス(BA)の側面から見たビッグデータへの関心は高い。ビッグデータの活用もBAの進展とともに急速に進化・発展している。そこでこの記事では、BAの側面から見た情報分析とIT基盤の技術トレンドについて説明しながら、今後の方向性を試論したい。

 なお、この記事におけるIT基盤とは、データの収集・蓄積・検索などを行う分析基盤ソフトウエアと、分析手法や分析フロー管理などを実装した活用支援ソフトウエアを指し、ハードウエアについての記述は必要最小限度に留める。

情報分析とIT基盤は連携して発展

 まず、コンピュータのダウンサイジングが始まった1980年代後半から、ビッグデータ時代に入った今日までの情報分析技術とそのIT基盤技術の流れを説明する(図1)。BAの中核をなす情報分析技術とIT基盤技術は、新たな情報分析技術にIT基盤の性能・機能が追いつく一方で、IT基盤技術の進化が新たな情報分析技術を牽引するといったように、互いに連携して発展を遂げてきた。ここでは、これらの流れを(1)黎明期、(2)ビジネスインテリジェンス時代、(3)RDBMSの全盛とビッグデータの萌芽期、(4)ビッグデータ時代─の四つに分けて順に解説しよう。

図1●情報分析およびIT基盤の技術トレンド
図1●情報分析およびIT基盤の技術トレンド
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(1)黎明期

 現在のBAの源流は1980年代後半にさかのぼる。当時の情報分析技術は、業務システムの延長であり、データをいかにまとめるかに主眼が置かれた。多変量解析をはじめとする統計的分析処理がPC上で実行可能になったのはこの時期であるが、ビジネスにおける情報分析技術の活用機運はあまり高くなく、主に集計処理が中心であった。

 一方、当時の情報分析技術を支えるIT基盤技術も未成熟だった。デスクトップ(PC)上で動作する分析ツールを用いて、単一データに対する処理を行うものが中心である。PCのリソース的な制約のため、限られた分析処理しかできなかった。