「やっぱり、我が社もボヨヨンですかね?」

 エレクトロニクス業界のコンサルタントとして飛び回っていた20代の頃、ある大手素材メーカーの部長が私に尋ねた質問です。私が彼に説明していたのは、エレクトロニクス産業と素材産業の違いについてです。

 ソニーや松下電器産業(現パナソニック)といったエレクトロニクス企業を訪問すると、会議室に通されて、課長クラスの担当者がコンサルタントの私に応対してくれます。通常、応対してくれる担当者は1人きりです。

 私の訪問の目的は業界動向について情報交換することですが、エレクトロニクス企業の担当者は自分の会社のビジネスについてよく把握しているし、業界全体の動きについてもよく理解しています。小一時間ほどのインタビューは、私は大先生に弟子入りしたような気持ちで、知識を詰め込もうと必死にくらいついたものです。

 ソニーや松下電器へ部品を納入している電子部品メーカーへも頻繁に訪問していました。地方の工場を訪問すると工場で一番立派な会議室に通されて、工場の幹部がみんな出そろってきます。

 電子部品メーカーは特定の部品だけを取り扱っているので、知識の豊富な技術領域は限られているのですが、エレクトロニクス業界全体へ営業しているので、業界の動きには敏感です。情報に敏感な彼らですから、私からどんな情報でも得ようと、それこそみんなで私を質問攻めにします。競合企業の動きやセットメーカーの競合状況、海外の需要などなど、ありとあらゆることを質問されるので、とても気が落ち着きません。

 もう少し小ぶりの部品メーカーを訪問したこともあります。やはり地方の工場を訪問するのですが、立派な会議室はありません。大部屋に椅子とテーブルがいくつかおいてあり、あっちでもこっちでもなんだかミーティングをやっています。

 私のインタビュー相手は設計課長1人ですが、小一時間のミーティング時間中、彼の部下が何度もすっ飛んできて設計課長に何やら相談しています。よくわからないのですが、リード線の色をどうしようとか、そんなことが私とのミーティングの間にどんどん決まっていく感じなのです。