今年の正月に「クラウドへの危機感が日本のIT業界を変えるか?」と題して、2016年を展望するコラムを書きました。

正月のコラムで指摘した動きはこんなことでした。

(1)AWS(アマゾン・ウェブ・サービス)のエンタープライズシフトの本格化
(2)マイクロソフトとオラクルが物量でAWSのクラウド戦略へ対抗
(3)十分な投資余力のない企業はクラウドベンダーとしての競合から脱落する
(4)オープンスタック企業連合の形骸化
(5)業界地殻変動の始まりと、日本のIT業界の3週遅れ
(6)2016年が日本のITのターニングポイントになる

(提供=123RF)
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 それから一年、それほど大きく見通しを誤ったポイントはなかったと思いますが、果たして日本のIT業界はターニングポイントを迎えたといえるのでしょうか。

 AWSのエンタープライズシフトは予想通り着実に進められました。同社イベント「AWS re:Invent 2016」でハミルトン先生(Vice Presidentが正式なタイトルですが、日米のAWS関係者がハミルトン氏のことをハミルトン先生と呼んでいます)が話したように、今日のAWSはフォーチューン500社が持つITリソースを合計した分量のCPUやストレージを毎日増設しているという猛スピードで成長しています。もはやNetflixやUberのようなネット企業ばかりを相手にしていたのでは成長が限られてしまいます。

 それにNetflixやUberといったネット企業はアメリカにはいくつもありますが、米国外に目を向けるとさほど大規模なネット企業はありません。中国のネット企業はアリババなどが注目ですが、中国でのビジネス拡大は米国企業のアマゾンにとって政治的なハードルがあるでしょう。AWSの戦略はよりグローバルに、よりエンタープライズへと変化しつつあります。エンタープライズシフトはAWSにとって最重要戦略の一つです。そしてグローバルマーケットという観点ではとりわけ日本市場の重要性が増しているのです。