前回のコラム(関連記事:アマゾンがIT産業を飲み込みはじめた2015年)では2015年を振り返って、Amazon Web Services(AWS)に代表されるクラウドコンピューティングの潮流が、IT業界全体を大きく変えつつある現状を概観しました。今回はこれを踏まえて2016年のIT業界を展望してみたいと思います。

 米国のIT業界は既にAWSの影響をどこも強く意識しています。AWSのターゲット市場は一層、エンタープライズITへとシフトしているからです。10月26日付けのこのコラム(関連記事:オラクルが「クラウドネイティブ」と言わない理由)で触れたように、米オラクルはありとあらゆるリソースを使って、AWSに対抗するロードマップを作り出しました。

 米マイクロソフトも膨大な投資をクラウドサービスの「Office 365」と「Microsoft Azure」へ振り向けています。パッケージ版の「Microsoft Office」や「同Windows」の販売を担ってきたパートナー企業を見捨てても、クラウド企業へ転身するのだと強いメッセージを投げかけています。

 カリフォルニアでOffice 365やAzureの導入サービスを手掛けるITサービス会社の社長に聞いた話ですが、彼らの顧客企業の70%が既に、Office 365を導入済みなのだとか。米国ではもはやクラウドコンピューティングはもうそこまで普及しているのです。

 オラクルとマイクロソフトの両社に共通するのは、豊富な資金と経営の早い決断です。どうやらこの両社は、クラウド企業としてAWSとまともにぶつかる考えのようです。勝敗はしばらくつかないかも知れません。

 一方、資金が乏しかったり、経営判断の弱い大企業もあります。そうした企業はクラウドコンピューティングの表舞台に立てず、徐々にニッチ市場へと追いやられていくことでしょう。