「人材不足」はいつの時代も経営トップの悩みのタネです。

 「うちはIT人材が不足しているから、楠さんが言うようなIT戦略を進めるなんてとても無理ですよ」という悩みを聞きくことがしばしばあります。先日お会いした金融機関のトップはこんな悩みを抱えていました。「最近のFinTechの話を聞くと、どうしても私には理解できないんです。やはり新しい時代につながるビジネスは若い人に担ってもらうことが必要です。昔は時代についていくことができたし、むしろ先を見ている方だと思っていたのですが」。

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 グローバルで活躍するグローバル企業でも人材不足は同じです。「なにしろ海外でITを見られる人材がいないから、グローバルCIOを外部から採用してこなければならないと思っています」。

 至る所で目にするIT人材の不足。日本企業には本当に人材がいないのでしょうか。

 IT業界を専門に経営幹部をスカウトするヘッドハンターをしている女性のWさんにたまたま会う機会がありました。

Wさん:以前はヘッドハンティングというと外資系企業ばかりだったのですが、最近は日本企業からの依頼がすごく増えています。とりわけ「ITが分かる人を探してくれ」というニーズはすごいんです。楠さんにもいろいろお話が来るのではありませんか。でもいつも「いい人を探してくれ」といわれるだけで、どんな人だったらいいのかちっとも分からないんです。いったいITが分かる人というのはどういう人なんでしょう?

 随分と本質的な質問です。あまりコンピュータに関心のない経営トップと話をしていると、「ITが分かる」というのはすなわちプログラミングの専門家で、データベースやインターネット技術をなんでも知っている人というイメージなのだろうと思うことがあります。しかしプログラミングやデータベースのことに経営トップはまず関心がありません。そういう専門家を連れていったところで、経営トップとはまるで会話が成立しないに違いありません。