今年(2015年)の元旦に日本経済新聞がFintechを米国の動きとして特集記事で取り上げました。これが日本へFintechを本格的に紹介した最初の記事となりました。それからというもの、国内金融業界は「Fintech」に取り憑かれているようです。

 大手の金融機関が新興ベンチャー企業と提携したり(関連記事:みずほ銀行がFinTechを加速、マネーフォワードと協業、NTTデータの新サービス活用も)、ビットコインに代表される暗号通貨の中核技術「ブロックチェーン」の国際団体に加盟して、決済への応用に取り組み始める(関連記事:三菱UFJがブロックチェーン技術の国際団体に加入、国内でも関連サービスが相次ぎ登場)といった動きが出ています。

 「Fintech」というワードを目にする機会は確かに増えていますが、場面によって微妙に意味が異なるのが気になります。金融技術を使ったソリューションであったり、スタートアップ企業を意味したりと様々です。

 メディアでの取り扱いも振れ幅が大きい。Fintechを紹介する記事などでは、しばしば米国のスタートアップ企業の製品やサービスが登場しますが、彼ら「Fintechスタートアップ」それぞれの事業内容にはあまり共通項が感じられません。

 困るのは「NRIはFintechやってますか?」といった質問です。正直、何の話をしてほしいのか意味が分からない。金融向けのITソリューション事業ならもちろん胸を張って「やっています」と答えられるのですが、どうやら聞き手の意図は違うところにありそうです。

 そもそも私にとって「Fintech」というワードはちっとも新しくない。「Finance(金融)」と「Technology(技術)」をくっつけた造語で、私の記憶では少なくとも90年代には既に米国などで使われていました。

 2003年には米国の金融業界雑誌「アメリカンバンカー」が業界番付「Fintech 100」を始めています。この時点で少なくとも100社のFintech企業があったことになります。