この1カ月、米Amazon Web Servicesや米オラクルのイベントに参加する傍ら、国内の金融業界のIT戦略に影響力を持つ重鎮たちと話し合う機会を持ってきました。クラウドへの急流やアマゾン、オラクルのそれぞれの戦略に対する私の見立てを話し、彼らの意見を聞きたかったからです。

 そこで聞こえてきたのは「このままでは日本のエンタープライズITは世界から取り残される」という彼らの強烈な危機感でした。ある金融機関のCIOはこう話します。

 「付き合う相手を考えなきゃって思ったよ。米国なんかの新技術の話を、これまではハードウエアベンダーの営業などを通して仕入れていた。だけど、クラウドや新しいソフトウエアの話題は今後、彼らは持ってこられないかもしれない。彼らに頼ったままでは最新の情報がドロップする」

 この話が出たのはハードウエアベンダーの地殻変動に話題が及んだときでした。米ヒューレット・パッカード(HP)はこの11月に会社を2つに分割します。ほぼ同時にパブリック・クラウド事業からの撤退も発表しています。

 また、パソコンメーカーの米デルが、ストレージ機器などを手掛ける米EMCを買収。EMCの子会社で、エンタープライズITのクラウド化を牽引してきた米ヴイエムウェアの「次の一手」が見えにくくなっています。このCIOはオラクルの変貌にも驚いていました。

 「それにしても(オラクル会長兼CTOの)ラリー・エリソンは70歳を超えても元気だね。パブリッククラウドでダントツのアマゾンに全面的に対抗するってことだよね。しかも自分たちが前面に立って。HPやEMCのようなハードベンダーとの協業モデルで一緒にやっていた以前とは大違いだ」