大企業がシステム開発や保守運用をSIベンダー(システムインテグレータ)などに丸投げする弊害はかなり大きいと思います。一方で「システムの内製化が必要だ」との意見がいろいろなところで出ていますが、状況は一向に改善されません。

 内製かアウトソーシングか。これは日本のIT業界における古くて新しい問題です。

 企業にとって、ITは必要不可欠な存在です。企業がITを自分の力でマネジメントしていくことの必要性は言うまでもありません。

 クラウド化やAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)エコノミーへの対応など、ITの変化が求められている今こそ、変化に対応した意思決定を企業が自らしていく必要があります。システム開発を丸投げし、自分の力で考えることができなくなった企業は競争力を失う羽目に陥るに違いありません。

 ただ、この議論には重要なポイントが欠けています。「何をするのか?」と「誰ならばできるのか?」です。マネジメントの立場にある人が「何をするのか?」に答えられないようでは、たとえ内製であっても何も実現できません。また、できもしないスタッフに社員だからという理由で「できろ」といったところで、できるはずはありません。

(提供=123RF)
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IT部門は「飛ばされる」部署

 ベンダーの立場でITサービスを長年経験してきた友人はこう言います。

「社内システムを担当するIT部門の人たちは、まるで危機感がない。首になるリスクがないからですよ。とにかく仕事を少なくしたいと思っているし、トラブルを起こしたりしても時間が過ぎれば何とかなると考えている。だから緊張感も持たない」

「A社で本番環境が止まるトラブルがあったそうですが、NRIが担当している現場で同じことが起きたら、どんな目に遭うことか。あの程度の仕事量だったら、私の部下が今の半分の人数でやってみせますよ」

 場面変わって、何年か前のある大企業のタバコ部屋。IT部門のすぐそばにあるタバコ部屋に、配属されたばかりと思われる若手部員が入ってきました。私の様子を気にもせず、こう話し始めました。

「とうとうこんなところに飛ばされちゃったよ。早く現場に戻してほしいものだ」