前回は「SIベンダー(システムインテグレータ)の競争力を決めるのは体力だ」という話をしました。

 結果的に、日本のエンタープライズIT市場で最も影響力を持っているのは大手SI、というよりも大手メーカー系(いわゆるメインフレーマ)のベンダーです。1980年代の終わりに私がコンサルタントとして調査したときの記憶では、NEC、富士通、日立製作所、日本IBMの4社が合計で日本のIT市場のおよそ70%を握っていました。

 メインフレーム全盛の時代から既に30年近くたち、主役はハードウエアからソフトウエアへと移り変わりました。今ではこの割合は大きく変わったはずだと思っていたのですが、エンタープライズIT市場のソフトウエア開発に限定して考えると、4社の合計シェアは依然として50%を上回っているようです(野村総合研究所による推定)。

(提供=123RF)
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「日本はクラウド化のスピードがなぜ遅いのか?」

「欧米はどんどんクラウドへ移行している。なのに日本はクラウド化のスピードがなぜ遅いのか?」

 ある外資系ソフトウエアベンダーY社の外国人幹部、Fさんにこんな質問を受けました。私は日本の業界構造を丁寧に解説し、ユーザーもITベンダーも積極的なクラウド化を望んでいないという背景を説明しました。Fさんはうなずきながら私の説明を聞いていましたが、どうも納得がいかない様子です。