2013年1月21日のことです。野村総合研究所(NRI)のデータセンターに大規模な障害が発生しました。センターの電源が落ちたのです。当時私は金融関連の本部長を務めていました。電源が落ちた結果障害を起こしたいくつものシステムの復旧にかかりきりになりました。

 安全・安心をうたったデータセンターが電源の障害を起こすのは、顧客の信頼への裏切りです。NRIという企業にとって決してあってはならない事故でした。信頼回復のためにどうするべきか。NRIにとって重い課題となりました。

 私はその年の4月にデータセンターを含む、基盤組織の責任者に就任することになり、このデータセンターの大規模障害の根本原因を究明、対策する総責任者になりました。

 膨大な原因究明のレポートを読んで感じたのは、データセンターの現場の「対応」に、血が通っていなかったという印象です。

 さまざまな対応マニュアルはありました。必要な要員も配置されていました。けれども、東京電力の広域停電をきっかけに発生した電源装置の誤作動という障害に直面したあのとき、マニュアルも要員も十分な機能を役割を果たせませんでした。

 どうしてこんな状況になったのか? 私には思い当たることがありました。トップを始めとする上司からなにげなく発せられる「できろ」という命令です。