前回は籠城戦の話を書きました。「援軍の来ない籠城戦は全滅を意味する。だから打って出なければダメだ」という話です。

 自分で書いておいて、今さら何をいうのかと言われそうですが、マネジメントの観点からすると、このストーリーはダメなマネジメントの典型だと思います。

 ITproの最近の記事を見ると、クラウドを使わないITビジネスにはみじめな未来しか残されていないような印象を受けます。これに限らず、ITの世界では輝かしい理想の姿をもてはやし、「そこへ行かなければ明日はない」とする二択の論調が以前からよく見られます。

 読者のみなさんの日々の職場でも、こんな議論が日々繰り広げられているのではないでしょうか。

  • クラウド市場の成長を取り込まなければ、明日はない
  • DevOpsをやらなければ、明日はない
  • グローバル市場で活躍できる会社でなければ、成長はない
  • 若手の活躍がなければ、明日はない

 明日はないと言われ続けて久しいですが、いまだに太陽はまた昇ってきます。

 ITの世界を離れても、二択を迫る議論が横行しています。

  • アマゾンに対抗しないと、売り上げが伸びない
  • 働き方改革をしないと、会社が持たない
  • 35歳までに結婚しないと、生涯独身を通さなければならなくなる
  • 年金改革をしないと、年金がもらえなくなる

 どれも理想論やインパクトの強いテーマをいったん掲げ、それができなければ明日はないと二択を迫るものです。どうも私たち日本人は、こういう二択が大好きなのではないかと思えてなりません。

 しかし総論としては正しい議論でも、うまく結果につながるケースを見たことがありません。しかもよく考えると、このフレームは「Aなのか、Aじゃないのか」という二択であって、「Aなのか、Bなのか」ではありません。選択肢はもともと1つしかないのです。

(提供=123RF)
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