ITに携わる組織は数多くありますが、あなたの組織の長所は何ですかと聞いてみてください。「根性がある」と胸を張って答えるところが実に多いと思います。野村総合研究所(NRI)も決して例外ではありません。「根性」はNRIのトレードマークだと思っています。

 長年、既存システムを担当してきた経験者ほど、経験と根性さえあればほとんどの問題、課題は解決できると考えています。前回のこのコラム(システム障害を乗り切る根性主義)で指摘した根性主義です。しかし、最近のITの開発では、長い経験を持つスーパーマンのような担当者でもかなわないボスキャラが登場することがあります。

 私が金融ソリューションの本部長だった頃の話です。ある日、駆け出しの女性マネージャーが部屋を訪ねてきました。そして私の前に座るなり、「楠 本部長、○○部を助けてください」と切り出したのです。

 「部長もグループマネージャーもみんな精神的に追い込まれています。仕事が多すぎてみんなパンパンです。このままではみんな心が折れてしまいます」。彼女はそう私に詰め寄ってきます。何が起こっていたのでしょうか?

 彼女が所属する部はインターネット経由で利用する金融機関向けSaaSソリューションを開発していました。長い時間をかけて練り上げたソリューション企画を、サービスとして提供するためです。数十億円の投資で開発したソフトウエアはほぼ完成し、ファーストユーザーへの導入カットオーバーが近づいていました。