「システム障害」は、IT部門にとって悪夢です。IT部門の「変えない」というミッションを果たす上で、最大のハードルがシステム障害です。システム障害が大きな業務影響を引き起こしてしまうと、IT部門としてはまるで面目丸つぶれになってしまいます。しかしいつ何どき、どういった理由で起こるかまるで分からないのがシステム障害です。

 例えば東日本大震災の直後。メガバンクなど、多くの重要なシステムに大きな障害がありました。大きなシステム障害が起こると、生活やビジネスの全てが当たり前でない形に変わってしまいます。

 銀行では他行決済ができなくなり、ATMが使えなくなり、給与の振り込みができなくなります。その結果、ビジネスは通常と異なる運用を迫られます。そうしたシステム障害を起こした社会的責任を、銀行などの企業が問われるケースも増えてきました。

 野村総合研究所(NRI)も東日本大震災当時、あるいはその前後に、運用や構築に関わる大小多数のシステム障害を経験しました。私も、夜の酒席で障害連絡を受けて、オフィスに飛び戻ったり、夜明け前に大規模障害の電話を受け、タクシーに飛び乗って陣頭指揮をとったりした思い出があります。

 その都度、強く感じたのは、ITがビジネスの現場に大きな影響、変化を与えてしまったという実感です。今やほとんどのビジネスは、IT抜きに全く身動きがとれない現実があるからです。

 大きなシステム障害が発生すると何が起こるか。初期段階では、経営トップや事業部門がIT部門に厳しい言葉を浴びせてくるのが常です。「お前らのせいで会社が危機だ。分かっとんのか?」ぐらいの勢いです。実際に怒鳴り散らす人にもたくさん遭遇しました。