前回のこのコラム(みんなが忘れているIT部門の最重要ミッション)で私は、IT部門の最重要ミッションが実はビジネスを「変えない」ことであり、このことを経営トップやIT部門自身が忘れるからこそ、「イノベーションの抵抗勢力」などと罵られるのだ、というお話をしました。

 では「変えない」というIT部門の最重要ミッションを忘れないためにはどうしたらよいでしょうか?IT部門をイノベーションの抵抗勢力にしないためには何が大事でしょうか?

 1つのヒントが米国の金融機関にありました。米国の金融機関では、ITの予算をCTB(Change the bank、変革のための予算)とRTB(Run the bank、維持のための予算)という2つに分けてよく議論するのです。

 この分類はちょっといい加減で、詳しく聞いてみると「それがCTBですか?」という首をかしげるテーマも多いのですが、変革のための予算と、維持していくための予算を分けて議論するという考え方が重要だと思います。さらに重要なのはCTBとRTBの割合や、それぞれに組み入れるテーマについて、経営トップであるCEOとIT部門を率いるCIOが議論して合意している点です。

 “Change”、つまり変革はIT部門が勝手に実施するものではなく、CEOが「こういう変革やるぞ」とリーダシップを取って予算を承認して初めて実施できます。CTBとRTBの議論で最も重要なのは、変革の主語がCEOだと明確である点です。CEOが変革を主導し、IT部門はCEOの意思を実現するために働くわけです。