先日、サンフランシスコのダウンタウンからほど近いある会社を訪問する機会がありました。最近話題の「DevOps(デブオプス)」の元祖のような会社です。実際に現場を見て、私はまるで違う宗教の教会に来てしまったように感じました。私たちが日常やっているシステム開発と、何もかもが根本的に異なっているのです。この訪問はDevOpsの魅力を知る大きな収穫を得られましたが、同時にDevOpsの活用を阻む、国内の企業が抱える高いハードルに思い至る結果になりました。

 DevOpsは「Development(開発)」と「Operation(運用)」を組み合わせた最近の造語です。短期間の開発を繰り返してアプリケーションを作り上げる「アジャイル開発」という言葉を覚えていますか? 最近あまり聞かなくなりましたが、DevOpsはアジャイル開発の延長線上に位置付けられる開発手法だと私は理解しています。

 実はこの訪問に先立って、国内で長年、ミッションクリティカルな業務アプリケーション開発に関わるプロ中のプロと議論するチャンスがありました。予習を兼ねてアジャイル開発やDevOpsについての考えを聞いたところ、「アジャイルもDevOpsも重要だと思うけれど、それってパセリだよね」と素っ気ない答え。つまり料理の飾りにはきれいだけれどメインの食材(業務系システムの開発に役立つ)ではないという意味です。

 私も長年、エンタープライズのITを預かる立場でしたから、業務系システムの厳しさと比較してフロント系は何となくちゃらちゃらしており、どうも本格的ではないという彼の気持ちは分かる気がします。例えば企業のホームページはいろんなアニメーションなどを使っていてきれいですが、業務系システム開発のプロからすると、重要性は高くないように感じるのでしょう。

 ビジネス部門の思いつきで「こんなの作ってよ」と言われてやるシステム開発に彼らが魅力を感じないのも同じ理由です。なぜならばビジネス部門の担当者の言うことには一貫性がなく、開発中に話がコロコロ変わってしまうし、そもそも予算をあまり持っていないからです。