ID管理、アクセス管理というと、とても専門性の高い分野だという印象を持たれると思います。実際、ID管理はとても奥深い専門領域です。野村総合研究所(NRI)にID管理・アクセス管理の専門家がどれほどいるか、実際に調べたわけではありませんが、従業員1万人の1%にも満たないのではないかと思います。

 この分野でとりわけ有名なのが、私の元部下の崎村夏彦上席研究員です。彼は長年この分野で活動しており、現在はOpenIDファウンデーションの理事長を務めています。

「当社がアカウントアグリゲーション(異なる金融機関の口座情報を集約・表示するサービス)を始める少し前に、『OFX(Open Financial Exchange)をやってみろ』と楠さんに言われました。マイクロソフトに当時いた高沢(冬樹)さんが『OFXの日本向け拡張に参加してほしい』と依頼してきたのがきっかけです。OFXは、マイクロソフトとインチュイットが共同で進めていた金融API(アプリケーション・プログラミング・インタフェース)を標準化したものです。それが巡りめぐって、IDを標準化するOpenIDファウンデーションの金融APIワーキンググループの活動へと発展していったんですよ」

 崎村くんにこう言われるまで、全然忘れていました。確かにそんなことを彼に言った覚えがあります。アカウントアグリゲーションとOFXについては後で触れるとして、私はIDの話に興味を持ちました。

「私と一緒にIDの標準化活動を担当しているのはグーグルのプロダクトマネジャーです。彼はID部門のヘッドで、最近は部下が2000人もいて『とてもやっていられない』とぼやいていますよ」
(提供=123RF)
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