「もうデータセンターは必要ない。AWS(Amazon Web Services)だけでシステムは構築できる」。そういう主張をよく聞くようになりました。確かにそうです。私も、もうクラウドだけで大概の業務システムが構築できると思います。同時に私はほんの少しだけ昔のことを思い出します。

 1990年代の主役はMicrosoftとパソコンでした。「パソコンでシステムはできない」という話を聞いたのはまだ情報産業を担当するコンサルタントだったころです。当時、野村総合研究所(NRI)の社内にダウンサイジング委員会がありました。文字通りメインフレーム中心のシステムを、UNIXやパソコンなどに置き換える検討をする会議でした。

 その会議の席で、「パソコンでシステムなんてできない」と主張するメインフレームのエンジニアに対して、大きな温度差を感じたものです。それが1992年。Windows 95が登場したのはそれからわずか3年後です。Microsoftは「Information at Your Fingertips (情報をあなたのすべての指先に)」というビジョンを掲げ、Windowsを売りまくりました。

 パソコンでどんなシステムでもできるようになる。データセンターにあるメインフレームなんていらない。大勢がそう思いました。私もその一人でした。Lotus Notesなどのグループウエアが大流行し、社内システムはイントラネットで開発しようという空気が強まりました。

 その頃にはシステム部門に移っていた私もある顧客に、Windows NTと、製品化されたばかりのSQL Serverを使った投資信託の販売管理システムの開発を提案しました。そのときのシステムがその後発展を続けて、NRIの銀行向け投資信託販売管理ソリューション「Bestway」になるとはさすがに思っていませんでしたが。