今年(2017年)は年初からAWS(Amazon Web Services)やMicrosoft Azureといったパブリッククラウドサービスで大規模な障害が発生し、関係者をひやっとさせたのではないでしょうか。

 クラウドの安定性、可用性については識者がいろいろと議論を繰り広げています。ITproでも「止められないならクラウドは使うな」という内容の記事が掲載されました。

 パブリッククラウドが基幹業務に利用され始めているいま、クラウドの安定性や可用性が重要なテーマになっているのは当然だと思います。

 動いているシステムはストップするリスクが必ずあります。絶対に止まらないシステムは存在しません。だからといって「止められないならクラウドは使うな」「謝って済むシステムにしかパブリッククラウドサービスを利用してはならない」などと言うのは極端すぎるのではないでしょうか。

(提供=123RF)
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「クラウドの安定」と「クラウド上のシステムの安定」は別

 私自身の立場からすると、止まってもいいシステムなど存在しません。システムが止まると、必ず誰かに迷惑をかけるからです。

 最近は、首都圏の私鉄や地下鉄が朝の通勤ラッシュ時に頻繁に遅延します。私の利用する路線では、時間通りに列車が運行されるのが1週間に1日もない状況です。「本日は列車が遅れましてご迷惑をおかけします」というアナウンスが毎日のように流されます。満員の車内で、このアナウンスを聞いて納得する人は一人もいないに違いありません。

 システムのトラブルが地下鉄の遅延のように毎日起こったとしたら、どうなるでしょうか。虎の子のお金を使って株を購入したはずなのに、システムが止まって購入できていない。銀行振り込みをしたのに、システムが止まって送金できていない──。大変なことになってしまいます。私たちの生活はシステムが止まらないことを前提に動いているのです。