前回までビジョナリーが創り出すイノベーション、そして新しいテクノロジーが超えなければならないキャズムについて見てきました。これらはITの一つの側面です。

 一方、イノベーションを動かす現場ではプロジェクトマネジメントがカギを握ります。プロジェクトマネジメントにはハイテクもローテクもありません。大規模な老朽化対策プロジェクトや既存システムの統合などはちっともハイテクではありませんが、大勢の人間が参加するという観点では難度の高いプロジェクトです。もちろんビジョナリーが望むような、ビジネスにイノベーションをもたらすプロジェクトには、強いプロジェクトマネジメントが常に欠かせません。

失敗プロジェクトの元凶とは

 世間では働き方改革が叫ばれています。マスコミや広告業界ほどではないかもしれませんが、システム開発は昔から労働集約的で長時間労働が避けられない職場でした。誰も好き好んで長時間労働しているのではありません。システム開発の現場が厳しい環境に置かれるのは失敗プロジェクト、赤字プロジェクトの存在が大きいと思います。つまりプロジェクトマネジメントの失敗です。

 システム開発は常に失敗のリスクにさらされています。分かっていても繰り返されるのが失敗プロジェクトです。どうして何度も失敗が繰り返されるのでしょうか。

(提供=123RF)
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 本部長として数百人のソリューション本部を担当していたころ、部長を全員集めて、丸1日かけて失敗プロジェクトのレビューをしたことがあります。このとき、自称「赤字戦士」のS部長が発した言葉が頭に残っています。

「まじめにやっていただけで、本気でやっていなかったんだよ」