エコシステム――。米国の、特にIT企業を訪問すると最近、必ず耳にする言葉です。ベンチャーだろうが大手だろうが「エコシステム」が大好きなのは同じ。プレゼンのスライドの2枚目くらいには「当社のエコシステムは…」って大体書いてあります。いや、さすがにこれは言い過ぎか。

 米マイクロソフトと米インテルが組んだ「ウインテル」の時代は「アライアンス」が企業戦略のキーワードでした。しかし昨今は、すっかりエコシステムに主役の座を奪われてしまいました。

 この連載でも何度か触れているように、クライアント・サーバーの時代には常識だった「水平分業」は今や時代遅れ。米アマゾン・ドット・コム、米アップル、米オラクル、米グーグルなど主要IT企業は「垂直統合」が戦略です。水平分業を象徴する言葉であるアライアンスが時代遅れになるのも当然でしょう。

 ところがいったん日本へ帰ってくると、ちっともエコシステムにお目に掛からなくなります。「当社のエコシステムは…」というプレゼンテーションなど日本では見たことがありません。そんな単語を見るのは日経BPの記事くらいです。まぁ、目の前の人が本当に「当社のエコシステムは…」なんて話し出したら、私は文句を言ってしまいそうですが。

 日本の企業に出掛けたり、幹部と会ったときに、私がエコシステムを説明しても、どうもうまく理解されません。日本人の多くは、エコシステムが自分に関係ないものだと感じているようです。

 しかしグローバル時代の昨今、米国と日本で企業が置かれた環境は大きく違いませんから、企業戦略だってそうそうは違わないはずです。実際、これほど企業戦略の方向性が異なる状態なのは私の記憶にありません。どうして日本企業はエコシステムが苦手なのでしょうか。