証券マーケットの好調が続きます。⽇本ではアベノミクスの成果で個⼈⾦融資産が1800兆円を上回りました。しかし上には上があります。個⼈⾦融資産で世界のトップは⽶国で、77.1兆ドル(2017年第1四半期)に達します。さらに驚いたことには、2017年1年間の資産増価額がおよそ7兆ドル、約700兆円も増加したのです。このペースが続けば⽇本の個⼈⾦融資産など3年もあれば出来上がってしまいます。

 日本の金融の専門家に言わせると「日本人はリスクを嫌うからね。現金信仰が強くて。米国人ばっかり儲かってしまって、米国がうらやましいよ」ということになります。しかし本当にそうでしょうか。実は米国の個人投資家が進んでリスクを取っているのには理由があります。カスタマーエクスペリエンス(顧客体験)です。

 米国の個人向け資産運用サービスで、ぶっちぎりの成果を出しているのは「マネージドアカウントサービス」という投資一任型の資産運用サービスです。日本では証券会社や一部の銀行がファンドラップというサービスを実施していますが、これは米国のマネージドアカウントを原型として作られた仕組みです。マネージドアカウントにもいろいろなタイプがありますが、合計すると米国の個人向け資産運用残高の半分くらいがマネージドアカウントで運用されています。

 大手の銀行ならどこでもマネージドアカウントサービスを提供しています。証券会社ではなく銀行というには訳があります。米国では個人向けに営業する証券会社がほとんど大手銀行の傘下に入ってしまったので、マネージドアカウントも銀行のサービスなのです。

 米国で最大手の一角を占める銀行のマーケティング戦略を、専門家のDさんからお聞きする機会がありました。

 「私たちの銀行サービスは普通預金、ローン口座、ウェルスマネジメント口座があるわけですが、顧客のステージを4つのステップに分けています。最初の段階はチェッキング口座、つまり普通預金口座だけのお客さんです。この段階では顧客1人当たりの収益が340ドルに過ぎません。2番目のステップはプライマリーアカウント、つまりお客さんにとってのメインバンクですね。プライマリーアカウントになると顧客1人当たりの収益がだいぶ増加して、600ドルになります。3番目のステップはレンディング、つまりローン口座です。顧客当たりの収益は1400ドルに達します。そして4番目のステップがウェルスマネジメントで、ここまで到達すると1顧客当たりの収益は3000ドルになります。」