2017年がやってきました。今年が日本のITにとってターニングポイントになるか、年末のコラムではそんなことを書いてみました。米国を見るとどんどん変化のペースが速くなっている。それにも関わらず、日本では十年一日のごとくシステムの年中行事が繰り返されています。危機感は高まるばかりです。

 そんな頃、NRI社内の新しいプロジェクトについて報告を受ける機会がありました。クラウドの時代にあったビジネスモデルを目指し、新しい領域に挑戦しようというのです。志はとても高いし、応援したくなります。

 ところが具体的な話を聞いて見るとどうも怪しい。ここもあそこも問題ばかり。思わずいろいろとダメ出しをしてしまいました。「こんなやり方じゃだめだ」とか、「体制に問題がある」だとか。担当者はシュンとしてしまいましたが、仕方ありません。私としては言うだけのことは言ってやらないと、失敗してからでは取り返しがつかないという思いなのです。

(提供=123RF)
(提供=123RF)
[画像のクリックで拡大表示]

 その数日後、年末も押し迫った忘年会で、ある大先輩からこんなご指導を受けました。

 「楠くん、ダメ出しばかりしていてもダメなんだよ。みんなが君に期待していることはポジティブなことのはずだよ。ダメ出しばかりする役員の話なんて誰も聞きたくない。そんなことばかりしていても、定年後はポイっと忘れられるだけだよ」。

 なるほど、確かにそうです。私もこれまで先輩や上司に何度もダメ出しされたものです。厳しい指導を受けたことは何度もありました。けれどもダメ出しや厳しい指導を受けて、私がターニングポイントを創り出したことはこれまで一度もありません。