最近調べものをしていると、米ペイパル共同創業者のピーター・ティール氏の名前を見かけることがいやに多い。今さらながら彼の突き抜けたインテリジェンス、というか、エキセントリックさに驚かされる。
ティール氏を含むペイパル創業メンバーは「ペイパル・ギャング」と呼ばれることがある。このグループは、米リンクトインを創業したリード・ホフマン氏や米テスラモーターズのイーロン・マスク氏ら、成功を収めた起業家を何人も輩出している。ティール氏は米フェイスブックの初期の投資家でもあり、その風変わりなさまは同社の創業物語を描いた映画「ソーシャル・ネットワーク」でも伝えられていた。
彼の名前を見つけたのは、AI(人工知能)研究を行う米カリフォルニア州バークレーの研究機関、MIRIの寄付者としてだ。MIRI(Machine Intelligence Research Institute)は、AIが人間に脅威を与える存在になることを防ぐにはどうすればいいか、「フレンドリーAI」をどう作るのかを研究している組織である。
バークレーを拠点としているものの、カリフォルニア大学バークレー校とは直接の関係は無い。大学にも行かず自力でAIを学んだエリザー・ユドコフスキー(Eliezer Yudokowsky)氏がMIRIを創設した。AIの脅威は、それこそ最近になってイーロン・マスク氏やスティーブン・ホーキング氏らが声高に語り始めたが、このMIRIが作られたのは2000年のこと。ユドコフスキー氏はそれよりももっと前から、AIの在り方を考えて来た人物である。そこにティール氏が関わっているのだ。
別の2カ所でも、彼の名前を見かけた。
海上に新国家を建設する研究所を創設
一つはシーステディング研究所(Seasteading Institute)の共同創設者として。同研究所を説明するのは実に難しいのだが、これは海上に新国家を建設するという構想である。いや、埋め立て地などではない。海の上に独立国家を建国しようというのだ(写真)。
これはコンピュータゲームの一種か、と勘違いしそうな構想だが、関係者たちは大真面目だ。この組織は、技術的にも法的にも財政的にも全ての面で完結した国家となることを目指していて、単体での持続を追求していくのだという。もちろん、独自の統治方法や経済活動を持つ。