米フェイスブックのマーク・ザッカーバーグCEO(最高経営責任者)が、長女が生まれるのに合わせて2カ月の育児休暇を取ると発表したことが話題になっている。

 ザッカーバーグ氏の「Facebook」のページには、「妻のプリシラと一緒に、長女を迎える準備を始めました。子供用の本やおもちゃを選んでいます」というなごやかな書き込みに続いて、2カ月の育休を取る理由が書かれている。それによると、両親が新生児と一緒にいる時間を増やすほど、その子供や家族にとって好ましい結果がもたらされるという研究があるそうである。「フェイスブックでは、母親にも父親にも最長4カ月の有給育児休暇を与えています」ということだ。

 もちろん、この発表をアメリカ世論は諸手を上げて歓迎している。「ワーク・ライフ・バランス」が取り沙汰される中、最も注目を浴びるテクノロジー企業の1社で、その経営トップ、しかも男性が、生まれてくる子供のために2カ月もの育休を取るというそのインパクトは大きい。全てのアメリカ企業はこれに見習うべきだ、彼のようなセレブ父親が育休を取るとは励まされる、これは女性にとってこそ大きな追い風になる、などなどの意見が出ている。

 だが、この手の議論はどうも上滑りである気がしてならない。「本当?」という気分だ。そうでなくとも、そこには二面性があるのではないだろうか。

ザッカーバーグ氏は本当に「休む」の?

 まず、本当に2カ月も育休を取るのかという疑問がある。今やネットでいつでもどこでもつながっている時代、ザッカーバーグ氏が2カ月育休と取ると言っても、それはザッカーバーグ氏が2カ月もの間、関係者などと完全に没交渉になることを意味するわけではないだろう。会社の幹部とはいつもメールでやり取りできるし、たとえ彼が出社することは本当にないとしても、幹部を自宅に呼び出したり、テレカンファレンスで会議をしたりするはずだ。何となく会社にはいないかもしれないが、仕事から不在になることはないはずだ。

 また、彼のような人が育休を取るのと、普通の社員が育休を取ることとの大きな違いも無視されている。育休が有給と言っても、給料の半分など、その一部が出るだけだ。ザッカーバーグ氏やテクノロジー企業に務める高給取りの社員はそれでも生活していけるだろうが、給料が半分になると生活ができなくなる家族もある。いや、世の中を見回すと、そうした家族の方が圧倒的に多いはずだ。そんな家庭では、稼ぎ柱の父親が2カ月も育休を取ることなど不可能だ。

 そしてこれは私の予測だが、ザッカーバーグ氏のような人は、我々が言うところの「育児」をすることは決してないだろう。彼のように460億ドルもの資産のある人々は、家の中でお手伝いさんをたくさん雇っている。掃除、洗濯、調理だけではなく、育児専門の「ナニー」もいる。それも何人もいる。ザッカーバーグ氏自身がおしめを替える必要はない。言わば「プチ・バッキンガム」のような恵まれた生活をしている彼の育児は、赤子を抱えた夫婦が寝不足で目の下を黒くしながらどうにか毎日を過ごしているのとは大違いになる。