米Adobe Systemsが2016年11月1~3日に米サンディエゴで開催した「Adobe MAX」では、ほかのテクノロジーコンファレンスとは異なり、リアルな素材を利用したデザインや「もの」の展示がたくさん見られて新鮮だった。デジタルとフィジカルを混合した、印象深い展示をいくつか紹介しよう。

 大きく目立ったのは3D(3次元)のボディスキャンをする「Artec 3Dスキャナー」。人間がすっかり入ってもまだ余裕があるほどの大型スキャナーで(写真1、2)、これで取得した3Dデータから人体モデルを3Dプリントする。「小さな自分」を作ってくれる展示とあって、行列ができるほどの人気だった。

写真1●人間をすっぽり包む「Artec 3Dスキャナー」
写真1●人間をすっぽり包む「Artec 3Dスキャナー」
撮影:瀧口 範子
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写真2●3Dプリントした人体モデル
写真2●3Dプリントした人体モデル
撮影:瀧口 範子
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 開発会社のArtec Groupはルクセンブルグが本社だが、アメリカやロシアにも進出し、現在はシリコンバレーのパロアルトにショールームを設けている。このスキャナーのような大型のものから、目の前にあるものをスキャンできる手に持つタイプなども開発している。

 オンラインでプリントサービスを提供している米Mama’s Sauceという会社の展示は、ビンテージな印刷機やバッジスタンプ機などが試せるようになっていて、手触り感がいっぱいだった(写真3)。デジタルになっても、こうしたサービスがあるのはうれしい。インクの盛り上がりや紙の素材感など、忘れていた感触がよみがえるようだ。

写真3●米Mama’s Sauceが展示したビンテージ印刷機
写真3●米Mama’s Sauceが展示したビンテージ印刷機
撮影:瀧口 範子
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 オンラインで注文できる名刺や箱、本の装丁などの会社の展示もいくつかあった。いずれも紙見本や色見本などがカラフルで、見ているだけで楽しいものだった。デザインがデジタル化されているためにバリエーションが豊富で、その上しっかりとした紙の感覚がある。デジタルに名刺交換もできる時代になっても、紙の名刺がなかなか消えないのは、考えてみると興味深いことだ。

 身体を動かして、デジタル連続写真をその場ですぐにパラパラ漫画風に製本していれるサービスや、プロのイラストレーターがタブレットで似顔絵を描いてくれるサービスがあったのも、クリエーターのイベントならではのことである。