VR(Virtual Reality、仮想現実)が、スーパーやドラッグストアにおける商品配置や顧客の動線設計などの「店作り」を一変させる可能性がある。そんなびっくりするようなVR事例を、米サンディエゴで開催されたカンファレンスで目撃した。

 VRは既にゲームや映画などのエンターテインメントを一変させて来たが、現在は設計や製造現場、インフラのメンテナンス、教育など広い分野での応用が始まりつつある。そして今後はさらに、小売業でも活用が進みそうだ。

 筆者が小売業におけるVR活用の可能性を感じたのは、サンディエゴで2016年10月24~26日に開催された「Intel Capital Global Summit」の会場でのことだ。そこでは米InContext Solutionsという2009年に創業したスタートアップが、スーパーやドラッグストアの商品棚における商品配置をバーチャル空間に実現し、それを顧客に試してもらうという技術を展示していた。同社は米Intelのベンチャーキャピタル部門、Intel Capitalが出資するスタートアップの一つである。

 日本でも米国でも、スーパーやコンビニの商品棚は各社メーカーの闘いの場だ。どれだけ目立つところに商品を置いてもらうか、どれだけ棚の面積を確保できるかによって、商品の売れ行きが左右する。そして店側も、売れ行きが伸ばせるように人気商品を手厚く扱い、新製品を分かりやすく配置するなどの工夫をする。いろいろな商品が目に入るよう客の動線も練り、最大効果を狙うのだ。

バーチャル空間で商品や商品棚を並び替え

 これまでは、店頭で実際に商品をいろいろ並べてみて、客の反応や売り上げから効果を把握するしかなかった。それに対してInContextのソリューションを使うと、バーチャル空間であれこれ並び替えてその中を歩き回って試したり、顧客にもVRで体験してもらって、その反応をあらかじめ分析したりできるようになる(写真)。

写真●InContext Solutionsによるデモの様子
写真●InContext Solutionsによるデモの様子
撮影:瀧口 範子
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 また、最終的に配置が決定すると、それをタブレットなどで店員に知らせ、その通りに商品を並べるよう指示することも簡単になった。バーチャル空間でも商品棚と商品のサイズの比率は合っているので、並べてみたものの商品がうまく入りきれなかったといったミスを防げる。

 驚くべきは、その簡易さだ。VRのヘッドマウントディスプレイをかぶると、既にそこはバーチャルな店内空間になっている。これは実際の店内空間を再現したものだった。