大統領選の投票日が1カ月先に迫り、民主党ヒラリー・クリントン氏と共和党ドナルド・トランプ氏の両候補の闘いがピークに達しようとしている。筆者の回りでも、投票日に備えてスウィングステート(激戦州)に何週間も住み込み、人々を投票場へ案内するボランティア活動をすると言う人も出てきた。4年に1度の大統領選時はいつも緊張感が高まるが、今年は尋常ではない。支持者は必死だ。

 そんな中で、ひときわ高く反トランプの声を上げているのが、「LinkedIn」の創業者、Reid Hoffman氏である。現在はベンチャーキャピタル、Greylock PartnersのパートナーでもあるHoffman氏は、LinkedIn創業以前は米PayPalで執行副会長を務めて大きな富を成した、いわゆる「PayPalマフィア」の一人だ。そのHoffman氏がここ数カ月、八面六臂の反トランプ活動を繰り広げているのだ。

 その一つは、「トランプト・アップ・カード(Trumped Up Cards)」の製作だ。「トランプト(Trumped)」とは、もちろんトランプ候補の名前を兼ねているが、「でっちあげ」という意味もある。トランプ候補が並べ立てているでっちあげや、この選挙戦で起こっている馬鹿げたことを一つずつカードにし、ゲームにして笑おうという趣向だ()。

図●「Trumped Up Cards」のWebサイト
図●「Trumped Up Cards」のWebサイト
出典:Trumped Up Cards
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 ルールの中には、女性蔑視や国外(ゲーム)追放など、トランプ候補のやり口を模倣したものも含まれていて、要はトランプの行動や発言をおちょくろうという風刺ゲームとなっている。

 このカード、最初は仲間内のために作ったものだったが、あまりに評判が良いので一般用にも販売している。「最大のカードセット」と銘打っているのは、それだけでっちあげが多いということだ。550枚入だ。装丁は、トランプ好みの金張りで価格は20ドル。選挙後は値上げの予定だとして、急いで購入するように呼びかけている。売り上げは全て、チャリティーへ寄付するという。

 もう一つは、26歳の海軍帰還兵が行っているクラウドファンディングへの寄付だ。このクラウドファンディングは、「もし、トランプ候補が10月19日までに自身の税金申告書を公開すれば、集まった資金を帰還兵支援関連組織へ寄付する」として、800万ドルを目標に行われている。10月19日は、最後の大統領選候補者間の討論会が開かれる日だ。