起業というとすぐにテクノロジーと結びつけたくなるが、テクノロジーとは無縁の「日用品」を開発して評判になるスタートアップもけっこう増えている。日用品が新しい発想の製品に置き換わろうとするのを見るたびに、時代の急激な変化を感じずにはいられない。

 日用品の分野で話題になっているスタートアップをいくつか紹介しよう。

 例えばベッドで使う「マットレス」の分野でも起業が増えている。中でも若者を中心に人気があるのは「Casper(キャスパー)」というブランドだ。拠点はニューヨークにある(写真1)。

写真1●マットレスのスタートアップ、米Casper
写真1●マットレスのスタートアップ、米Casper
出典:米Casper
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 Casperの特徴は、マットレスが丸められて箱に入った状態で届けられること(写真2)。Casperは直販メーカーで、ニューヨークとロサンゼルス、ロンドンの3カ所以外にはショールームがなく、専門店などにも商品を卸していない。従って購買者は店舗などで寝心地を試すこともなく「一応評価はいいらしい」という理由でオンラインでの購入を選んでいる。値段もクイーンサイズで850ドルと、高くもなく安くもないというところだ。

写真2●箱に入って届くCasperのマットレス
写真2●箱に入って届くCasperのマットレス
出典:米Casper
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 ショールームがない分、100日間の無料返品ができる上、筆者はまだ見たことがないのだが「巡業型ショールーム」というのがあるらしい。これは大型トレーラーにいくつか洞穴のようなスペースを作って、そこにマットレスが敷いてあるものらしい。寝心地を試したい人は、その狭い穴に潜り込んで寝転がるという趣向だ。

 これまでマットレスというと、高級感をかもしだすのが商売の秘訣のように見えたものだ。しかし最近はイノベーティブな製品とファンキーな商法との組み合わせがキーだ。マンハッタンの住民がCasperを注文すると、大きな荷台を前方に取り付けた自転車で配達に来てくれる(写真3)。

写真3●自転車でマットレスを運ぶ配達員
写真3●自転車でマットレスを運ぶ配達員
出典:米Casper
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 Casperを創設したのは4人の若者たち。デザイン会社の米IDEOやNASA(米航空宇宙局)のエンジニアの協力を得て、大多数の人々に合う硬さのマットレスを開発したという。