テクノロジー業界で今、良くも悪くも人目が集まっているのは米Snapだ。動画共有アプリの「Snapchat」やカメラ付きメガネの「Spectacles」を開発する同社は2017年3月2日に株式上場を果たしたが、ユーザー数の増加が減速している上に、上場に際して正確な情報を公開しなかったとして訴えられた。若きCEO(最高経営責任者)の振る舞いにもバブルっぽいものが見られる。

 Snapは2011年にロサンゼルスで起業した。相手に送った動画や写真が数秒で消えてしまうという新奇なコンセプトでスタートしたSnapchatが思わぬ人気を呼んだ。着々とユーザー数を伸ばした同社は米Facebookや米Googleが買収をもくろんだスタートアップとあって上場前から期待が膨らみ、上場初日には株価が公開価格の17ドルから24.28ドルと44%もアップした。この上昇率はGoogleやFacebook、中国Alibabaの上場時をも上回るもので、市場の熱狂が感じられる。上場当日の企業評価価値は330億ドルにもなった。

図●Snapが販売するカメラ付きメガネ「Spectacles」
図●Snapが販売するカメラ付きメガネ「Spectacles」
出典:米SnapのWebサイト
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 ところが、その熱狂もつかの間のこと。その後はトラブル含みの展開が続いているのだ。

 同社の株価が20%も落下したのは、上場企業として同社が2017年5月10日に初めて四半期決算を報告した直後だった。売上高が予測よりも低かった上に、ユーザー増加率が減速していることが明らかになったのだ。純損失は22億ドルに上ることも分かった。

 その後、ヘッジファンド数社が同社の株を買うなどしたため株価は持ち直しているものの、上場直後の株価はバブルな評価に煽られた熱狂だったことが否めない。

元社員から訴えられたことで疑惑が判明

 同社が何かと数字を水増し気味にしていたらしいことは、今年1月に元社員が起こした訴えによって知られるところとなった。この元社員はFacebookから移籍した人物で、Snapの成長戦略担当となった。しかし元社員は3週間で解雇される。この元社員によると、2015年の在籍中に同社上層部の説明の中で、実際には1~4%でしかないユーザーの増加率をフタケタ台だと述べたり、ユーザー数を数百万人分かさ上げして1億人と語っていたりなど、正確でない情報を社外に伝えていたという。

 元社員はそれを指摘したことが上場へのリスクだとして解雇され、その後「才能のない人材」としてSnapが業界に触れ回ったという。元社員は自分の評判を落とされるのを阻止するために、当初ロサンゼルス郡高等裁判所に訴訟を起こしていたが、現在は連邦レベルでの訴訟に格上げした上、内部告発者保護法の適用を求めている。同保護法は企業が株主を欺くなどの行為を犯した場合に適用されるものだ。

 この訴訟から、元社員が在籍中にFacebookの組織図を描くように命じられたことも明らかになった。元社員は解雇の理由の一つとして、これを拒んだことも挙げている。また同元社員によると、SnapのCEOであるエヴァン・スピーゲルは「Snapchatは金持ち専用」と語って、インドやスペインなどへの進出案を却下したという。