バーチャルリアリティー(VR)流行の中で、まだかまだかと製品の発表が待たれる企業がある。既に13億9000万ドル(約1500億円)もの巨額の資金を集めたスタートアップの米Magic Leapだ。2011年にフロリダで創業したMagic Leapに投資したのは米Googleや中国Alibaba、著名VC(ベンチャーキャピタル)の米Andreessen HorowitzやKleiner Perkins Caufield & Byers、半導体メーカーのVC部門である米Qualcomm Ventures、と、そうそうたる名前ばかりだ。

 否応にも期待が高まるわけだが、問題は製品の発表が遅れていることに加えて、同社のあまりの秘密主義に、本当は開発がうまくいっていないのではないか、大風呂敷を広げすぎたのではないか、などの疑いまで出てきたことだ。

 何よりVR分野の競争は激化する一方なので、既に市場に出ている製品の性能をかなり上回らなければ、消費者ががっかりするような状況に至ってしまうことだろう。

Microsoftの「HoloLends」に似た製品か?

 正確に言えば、Magic Leapの技術はVRではなくミックスト・リアリティー(MR)である。全ての画像をコンピュータのレンダリングによって生み出すVRと異なって、MRは目の前の現実世界の環境がHMD(ヘッドマウント・ディスプレイ)で透けて見え、そこにバーチャルな映像が映し出されるというものである。Microsoftの「ホロレンズ(HoloLens)」と同様の仕組みだ。

 同社の技術の核は「デジタル・ライトフィールド」と呼ばるもので、我々が現実世界で目にしているその光の世界とかなり近い方法でユーザーの目にバーチャル映像を届けるというもの。そのため、現実世界とバーチャル世界が自然にブレンドされるというという。

 同社がこれまでいくつか発表したビデオを見ると、オフィスの中に宇宙人やロボットが侵入してきて、バーチャルな武器を持って戦うとか、ビジネス用アプリケーションの画面が自分のデスクの上に浮かんで表示され、ジェスチャーで操作できるといったことがデモされている。普通の環境にいながら、ちょっとHMDを装着するだけでバーチャルなスペクタクルを楽しめるというわけだ。

 VRの場合、HMDを付けると外界から完全に遮断されるためイマーシブな(没入感のある)体験が楽しめるが、一方で周りからあまりに孤立していて、他人から見るとどうしても奇妙な様子になることを免れない。ユーザー自身も周りが見えないので、安全な場所でないと体験したくない。つまりVRには期待が集まるが、いろいろな制限もあるのだ。一方、MRならば、そうした不自然さや危なさもなく、応用範囲も広まるはずだ。