米国には「連続起業家(シリアルアントレプレナー)」と呼ばれる、次から次へと起業するアイデアの宝庫のような人々がいる。米Twitterや米Squareのジャック・ドーシー氏が著名だが、ロボット分野にも注目すべき連続起業家が2人存在する。
注目すべき起業家の一人目が、ボストンのスタートアップ米4moms(フォー・マムズ)の共同創業者であるヘンリー・ソーン(Henry Thorne)氏だ。2005年操業の4momsは、ロボット技術を応用した赤ちゃん用の乳母車やゆりかご、台所で使える赤ちゃん用お風呂などで、テクノロジー好きの若いお母さんたちに支持されている企業だ。
4momsが開発した電動式自動折りたたみ式乳母車「Origami」は、ユーザーがボタンを押すだけで畳んだ状態からスムーズに開いた状態になる(写真1)。この開閉機構にロボット技術を応用している。まるで折り曲げられた手足が伸びるようなおもしろい動きだ。
ロボット技術を応用したゆりかごの「mamaRoo」は、自律的に小刻みに揺れて赤ちゃんを落ち着かせる(写真2)。同じ動きを繰り返すのではなく、5種類の異なる揺れの動きを一つの機構で実現している。この部分にロボットで培ったメカトロニクスを応用しているのだという。ロボットのような外見ではないが、ロボット技術がこんなところに応用できるという好例だ。
4momsの共同創業者であるソーン氏は、ロボット研究で知られるカーネギーメロン大学の出身。ソーン氏は2001年に創業したロボット会社Aethon(エーソン)で大きな成功を収めた。
Aethonは、病院の中を自走してシーツや食べ物を搬送するロボットを開発する。本コラムでも過去に紹介したことがあるが、同社のロボットは現在、病院関係者に注目されている。
今でこそ、自走ロボットは珍しいものでは無くなっているが、ソーン氏が15年も前に病院用の自走式ロボットを発案したことは驚きである。それに大きくてモノモノしい病院用自走ロボットを開発したソーン氏の次のアイデアが、赤ちゃん用の製品だったとはまさにイノベーションという感じがする。ロボット技術やロボット開発での経験が、ほかの領域にも応用できるという証左とも言えそうだ。