オバマ大統領は任期終了を前に、2016年末から数々の恩赦を発表している。2017年1月17日(米国時間)には、「WikiLeaks」に米陸軍の機密情報を漏らしたチェルシー・マニング氏が減刑となった。だが、恩赦を受けたリストの中には、シリコンバレーの有名人が嘆願していた人物の名前が無かった。エドワード・スノーデン氏である。

図●恩赦を発表するホワイトハウスのWebサイト
図●恩赦を発表するホワイトハウスのWebサイト
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 2016年9月から始まったスノーデン氏の恩赦を求める署名キャンペーン『Pardon Edward Snowden』は、これまでに1100万人もの署名を集めた。主催したのは、世界で最も知られた人権擁護団体であるアメリカ自由人権協会(ACLU)やアムネスティー・インターナショナル、ヒューマン・ライツ・ウォッチなど。1月13日には代表者が嘆願書をホワイトハウスに届けている。

 周知のようにスノーデン氏は2013年5月、米国家安全保障局(NSA)による米国民をも対象にした個人情報の収集活動を、メディアを通して暴露。米政府が国民のプライバシーを侵害していることを、NSA局員として内部告発した。

 スノーデン氏はその後、香港からロシアへ逃亡し、米政府がパスポートを無効にしたために、いまだにロシアにとどまっている。本来は、エクアドルなど第三国への亡命を考えていたとされる。

 スノーデン氏の告発は米国民やテクノロジー業界を仰天させ、その結果、人々は政府による情報収集について認識を高め、また政府に協力してきたテクノロジー業界は、よりユーザーのプライバシーを尊重する方向へ舵を転換した。情報収集のために政府に裏口(バックドア)を与えないことや、スマートフォンなどデバイスの暗号強化がそれにあたる。

スノーデン氏の告発がテクノロジー業界を変えた

 嘆願書には、こう書かれている。「スノーデン氏は、NSAがアメリカの法令や憲法、国際法を踏み越え、捜査令状なく広範な監視を行っていたことを明らかにした。その結果、世界で議論が起こり、それによって政府が政策を転換し、人々は自身のプライバシーの捉え方を大きく変えた」。NSAの違法行為を告発したスノーデン氏は、裏切り者ではなく、国民のために正義を働いたと強調している。

 スノーデン氏の恩赦を求める署名には、著名人も名を連ねている。投資家のジョージ・ソロス氏、米Twitterのジャック・ドーシーCEO(最高経営責任者)、米Appleの共同創業者であるスティーブ・ウォズニアック氏、そしてベトナム戦争機密文書「ペンタゴン・ペーパーズ」の内部告発者として知られるダニエル・エルスバーグ氏などだ。