最終回となる今回は、BABOK Guide V3の「パースペクティブ(専門視点)」について解説する。BABOK Guide V3で取り上げられているパースペクティブは次の5つだ。

1. アジャイル
2. ビジネスインテリジェンス
3. 情報技術(IT)
4. ビジネスアーキテクチャー
5. ビジネスプロセスマネジメント
 
 これらのパースペクティブは、ビジネスアナリシスで実践されるすべてを表わしているわけではない。最も一般的に定義されているビジネスアナリシスの専門視点のうち代表的なものを表わしたにすぎない。

 どんなイニシアチブ(目的と目標を定義して取り組む作業)にも、上記のパースペクティブの一部または全部が含まれている。あるイニシアチブには技術コンポーネント(IT)があり、この技術コンポーネントはビジネスプロセスのチェンジ(ビジネスプロセスマネジメント)のために行う。そしてこのイニシアチブでは、作業の一部または全部をアジャイル開発で実施する。また別のイニシアチブでは2社の企業が合併するので、ビジネス能力と、合併がその能力にどのような影響を及ぼすか(ビジネスアーキテクチャー)を見る必要がある。そして経営者は、意思決定と分析(ビジネスインテリジェンス)のために、最新の情報を必要とする、という具合だ。上記5つのパースペクティブのビジネスアナリストが企業内にいると、経営者にとって大変心強い。

 以下では、アジャイル、ビジネスアーキテクチャー、ビジネスプロセスマネジメント(BPM)という3つのパースペクティブに絞り、それぞれの特徴と具体的な方法論または参照モデルを紹介する。

パースペクティブ1:アジャイル

 アジャイルイニシアチブでは変化が定常的に発生する。アジャイルイニシアチブで働くビジネスアナリストは、作業や戦術を絶えず再評価し、適応させ、調整していくことになる。ビジネスアナリストは、その責任範囲の最後の瞬間まで分析を実施してワークプロダクトを提供し、いつでも変更できる柔軟性を維持する。事前に分析作業を詳細に行うのではなく、ジャストインタイム方式で(必要なものだけを必要なときに)実施して、アジャイルチームが有効に使用できるようにする。アジャイルなビジネスアナリシスを実施すると、アジャイルチームが適切なタイミングで適切な詳細度の要求を利用できるようになる。

 BABOK Guide V3では、「スクラム」「XP(Extreme Programming)」「FDD(Feature Driven Development)」「DAD(Disciplined Agile Delivery)」「SAFe(Scaled Agile Framework)」などが取り上げられている。

 スクラムのように少人数で開発する場合、ユーザーとの直接コンタクトが可能なので従来はそれほどビジネスアナリシスの必要性は認識されてこなかったかもしれない。しかしエンタープライズのレベルでアジャイル開発が行われてくると、アジャイルチームの中に、ビジネスアナリストまたはビジネスアナリシスの役割(スキル)を持つメンバーが不可欠になってくる。