第7回から3回にわたってBABOK Guide V3の「基礎コンピテンシ」について解説してきた。今回は、そのなかの「コミュニケーションスキル」「人間関係のスキル」を取り上げる。

基礎コンピテンシ4:コミュニケーションスキル

 コミュニケーションは、送り手が意図した意味を届けるために、受け手に情報を伝える行為である。傾聴スキルは、送り手と受け手の間の理解と信頼を深くすることを支援する。有効なコミュニケーションはすべてのステークホルダーの役に立つ。

 有効にコミュニケーションを行うには、コミュニケーションスタイルとテクニックを受け手の知識レベルおよびコミュニケーションスタイルに適応させることが必要である。コミュニケーションの上手な人は、声の調子、ボディーランゲージやコンテキストがどのように言葉の意味を変えるのかを理解している。用語と概念を正しく理解すれば、メリットが大きい。

 有効なコミュニケーション計画は、受け手について知られている情報を、送り手がレビューすることを含む。母国語と文化、動機づけ、優先事項とコミュニケーション、学習、そして思考スタイルなどについて、送り手と受け手の間に差があると、特定のコミュニケーション方法が必要になることがある。

 情報を提示する計画を立てるには、その個人に合わせて、理解してもらえるように意図的に思慮深く各々の部分情報を作成し、パッケージングしなければならない。情報のコミュニケーションを計画する場合に考察することとして、以下の4点がある。

  • 受け手が何を知っているか、何を知らないのかを考慮する
  • 論理的で包括的な方法で情報を組み立てる
  • 意図する意味を伝えるために、情報を提示する最良な方法を決定する
    (例えば、視覚教材、グラフ、図形などを使用して)
  • 受け手の期待を理解する

 コミュニケーションスキルのコンピテンシは次の通りである。

(i) 言語コミュニケーション
(ii) 非言語コミュニケ―ション
(iii) 文書コミュニケーション
(iv) 傾聴

(i)言語コミュニケーション
 ビジネスアナリストはさまざまなステークホルダーに、アイデア、コンセプト、事実および意見を伝えるため、言語コミュニケーションを使用する。

(ii)非言語コミュニケーション
 非言語コミュニケーションのスキルによって、身体の動き、姿勢、顔の表情、ジェスチャー、アイコンタクトなど(ただしそれらに限ったことではない)により、メッセージを有効に送り、受け取ることが可能になる。

(iii)文書コミュニケーション
 ビジネスアナリストはさまざまなステークホルダーにアイデア、コンセプト、事実および意見を伝えるために文書コミュニケーションを使用する。

(iv)傾聴
 有効な傾聴によって、ビジネスアナリストは、言語でコミュニケーションする情報を正確に理解できる。

 傾聴とは「単に言葉を聞くことではなく、その意味を理解するプロセス」とされている。傾聴は、メッセージの本質を理解するために使用している言葉以上に、別の人がコミュニケーションしようとすることを聴いて解釈することである。

 傾聴は聴き手と話し手の両方が同じ理解を持つことを確実にするために、話し手が述べたことを聴き手が異なる用語で要約し繰り返すことも必要だ。ビジネスアナリシスの「引き出し」に不可欠のコンピテンシである。